写真フィルムの巨人として知られた富士フイルムホールディングスが、劇的な変貌を遂げています。同社は2020年2月6日、2020年3月期の連結純利益が前の期と比べて19%増の1650億円になる見通しだと発表しました。これは従来の予想を30億円も上回る上方修正で、2期ぶりに過去最高益を更新する勢いです。売上高こそ3%減の2兆3700億円に下方修正されましたが、本業の儲けを示す営業利益は5%増の2200億円と、利益重視の強固な体質が浮き彫りになりました。
ネット上では「もはやカメラの会社ではない」「時代の変化に合わせた事業転換の見本帳のようだ」と、同社の見事な構造改革に称賛の声が相次いでいます。私自身も、かつての主力事業に固執せず、自社の持つ高い技術力を応用して成長分野へ舵を切った経営手腕には深く感銘を受けました。売上高が減少しながらも利益を大きく伸ばせるのは、高付加価値なビジネスへの移行が成功している証拠だと言えるでしょう。
チェキ失速の影で躍進するヘルスケア!バイオ医薬品製造受託の全貌
一方で、長年親しまれてきたカメラ関連事業は苦戦を強いられています。産業用レンズやデジタルカメラの販売が落ち込んでいるほか、大人気だったインスタントカメラ「チェキ」も日本の消費税率引き上げの影響などで失速しました。助野健児社長は記者会見で、チェキの年間販売目標を1000万台から900万台へ引き下げたと明かしています。このニュースに対し、SNSでは「チェキの減速は寂しい」「スマホの進化や増税が響いたか」と、時代の波を感じるファンの声が目立ちました。
しかし、この落ち込みを完全にカバーしたのが、驚異的な伸びを見せる医療事業です。同事業の営業利益は29%増の430億円となる見込みで、内視鏡などの医療機器や、病院のデータを一元管理するITシステムが非常に好調です。さらに特筆すべきは「バイオ医薬品の製造受託(CDMO)」の成長でしょう。これは、製薬会社に代わって高度なバイオテクノロジーを用いた薬を生産するビジネスのことです。細胞を扱う精密な技術は、実はフィルム製造で培った技術と深く繋がっています。
富士フイルムは2019年に約980億円で買収したデンマークの工場などをフル活用し、世界中の製薬会社から注文を次々と獲得しています。これこそが、同社が「医療のインフラ企業」へと進化を遂げた決定的な要因です。カメラファンとしては少々寂しさもありますが、人々の命を救う領域で独自の写真技術が生きているという事実は、一過性の流行に左右されない絶対的な強みであり、素晴らしい選択であると考えます。
事務機事業の構造改革と気になる新型ウイルスへの対応
また、富士ゼロックスが主導する事務機事業も利益を大きく押し上げています。世界的な景気減速の影響で全体の売上は下がるものの、2018年3月期から継続してきた人員削減といった徹底的な構造改革が実を結びました。その結果、営業利益は23%増の1190億円に達する計画です。無駄を徹底的に省き、筋肉質な組織へと生まれ変わったことが、現在の厳しい経済環境下で大きな武器となっています。
さらに、世界中で感染が拡大している新型コロナウイルスによる中国工場への影響についても、助野社長は「現時点での在庫は十分に確保できており、業績へのインパクトは非常に限定的である」との見解を示しました。この冷静で迅速なリスク管理体制に対しても、市場や投資家からは「サプライチェーンの管理が行き届いていて安心感がある」と、高い評価と信頼のコメントが寄せられています。
同日発表された2019年4〜12月期の決算では、カメラの苦戦やディスプレー材料の需要低迷、さらに114億円ものマイナス要因となった円高の不利益を被りました。それでもなお、有価証券の評価益などが手伝い、純利益は19%増の1206億円を確保しています。一時的な逆風をものともせず、医療やバイオという新たな柱で未来を切り開く富士フイルムの経営ストーリーは、多くの日本企業にとって希望の光になるに違いありません。
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