世界を代表する有名企業の間で、衝撃的な財務状態が広がっています。コーヒーチェーン大手のスターバックスや、航空機大手のボーイングといった名だたる企業が、相次いで「債務超過」に陥っていることが判明しました。2019年度のデータを集計したところ、米国を代表する主要500社のうち、実に24社がこの状態に該当しています。債務超過の合計額は約7兆2千億円に達しており、あのリーマンショックが起きた2008年を超える規模へ膨らんでいる状況です。
そもそも債務超過とは、会社が持つすべての資産を売り払っても、抱えている負債を完全に返済できない状態を指します。日本では倒産の危機や上場廃止に直結する深刻な事態と捉えられますが、現在の米国では少し事情が異なっているようです。SNS上でも「あのスタバやマクドナルドが危ないの?」と驚きの声が上がる一方で、「アメリカ流の最先端の財務戦略なのか」といった冷静な分析を試みる投稿も見られ、大きな反響を呼んでいます。
なぜ、業績が良さそうな企業がこのような事態になっているのでしょうか。その理由は、歴史的な低金利を背景にした過剰な「株主還元」にあります。企業は市場から非常に低い金利で資金を借り入れ、自社の利益を上回る規模の配当金を支払ったり、「自社株買い」を行ったりしているのです。自社株買いとは、企業が自らの資金で市場の株式を買い戻す行為で、株価を上昇させる効果があるため、株主から大いに歓迎される仕組みとなっています。
米国では財務の健全性を維持することよりも、投資家への利益分配を優先する文化が根強く存在します。経営陣の報酬が株価に連動しているケースも多く、こうした歪んだインセンティブが株主への過剰な傾斜を後押ししているのでしょう。例えばボーイングは、新型機の運航停止問題で2019年12月期に巨額の赤字を出したにもかかわらず、巨額の配当や自社株買いの手を緩めず、結果として83億ドルもの債務超過を記録しました。
フリーキャッシュフローの罠と金利上昇がもたらす恐怖
米国でこれほどの事態がすぐに問題視されないのは、企業が「フリーキャッシュフロー」を安定して稼ぎ出しているからです。これは、企業が事業活動で得た収入から、維持に必要な投資額を差し引いた「手元に自由に残る現金」を意味します。この現金収入が黒字である限り、借金の返済に窮する確率は低いため、格付け機関も投資に適しているというお墨付きを与え続けています。現にマクドナルドの経営陣も、この強固な現金収支を根拠に自信を示しました。
しかし、私はこの財務戦略に対して強い危機感を抱かざるを得ません。いくら現時点での現金収入が安定しているとはいえ、元手となる自己資本を削り、借金を膨らませて行う株主還元は、砂上の楼閣に過ぎないからです。米主要企業の負債総額は2019年末時点で過去最大の増加を記録しており、企業の自己資本比率は11年ぶりの低水準にまで落ち込んでいます。これは、世界的なカネ余りという異常な環境が作り出した、極めて危ういバランスです。
もし、何らかの地政学的リスクや経済の変動によって金利が急上昇した場合、この戦略は一転して悪夢へと変わるでしょう。国際通貨基金(IMF)なども、積み上がった企業債務を金融システム全体の最大のリスクとして警戒し始めています。目先の株価や投資家の機嫌を取るために、将来の生存基盤を危険にさらす経営が本当に正義なのか、今一度立ち止まって考えるべきではないでしょうか。
コメント