私たちは日々、インターネットやスマートフォンを便利に使いこなしていますが、その通信データがすべて国家に監視されているとしたらどうでしょうか。2013年に世界を震撼させる大事件が起きました。米国家安全保障局、通称「NSA」が地球規模で無差別に個人情報を集めていた事実が暴露されたのです。この衝撃的な告発を行った張本人こそが、エドワード・スノーデン氏に他なりません。
この壮大な告発劇は、世界中で大きな波紋を広げました。SNS上でも「私たちのプライバシーはどこへ行ったのか」「彼は英雄か、それとも裏切り者か」といった熱い議論が今なお交わされています。国家の最高機密に触れる立場にいたスノーデン氏は、偶然にも恐るべき計画を知り、強い憤りを感じたといいます。自分が国に利用され、個人の尊厳が踏みにじられたという実感が、彼を命がけの行動へと駆り立てたのでしょう。
これまで彼の素顔や事件の背景については、数多くの映画や書籍で語られてきましたが、情報が入り乱れて真実が見えにくくなっていました。しかし、彼の自著である『消せない記録』の登場によって、ついにその半生と真相が白日の下に晒されることになります。元々はごく普通の米国市民だった彼が、なぜこれほど巨大な闇に立ち向かうことになったのか、その歩みが克明に記されているのです。
スノーデン氏が情報機関へと足を踏み入れた背景には、いくつかの運命的な要素が重なっていました。彼の両親が政府機関に勤務していたことや、自身が幼少期からコンピューターに対して異常なほどの情熱を注いでいたことが挙げられます。さらに決定打となったのが、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロでした。この悲劇をきっかけに、サイバー空間でテロリストをあぶり出す仕組みが急務となったのです。
ここで専門用語について少し解説を加えておきましょう。彼が関わった「サイバー空間」とは、インターネットなどの情報通信ネットワークが作り出す仮想的な活動領域のことを指します。この空間でのテロ対策として、スノーデン氏は民間企業に技術者として採用されました。そこから、米中央情報局である「CIA」や先述の「NSA」といった、国家の心臓部とも言えるインテリジェンス機関へ派遣されることになったわけです。
本書では、これまで謎に包まれていた「一介の技術者がどうやって最高機密を盗み出したのか」という手口がリアルに明かされています。結論から言えば、組織内の機密データがあまりにも膨大すぎて、ずさんな管理体制になっていたのが原因でした。そこに目を付けた彼は、なんと自動で情報をかき集めるシステムを自作し、ネットワーク上で暗躍したのです。最終的には、小さなSDカードにデータを保存し、靴下に隠して持ち出しました。
さらに、内部告発サイトの代表であるジュリアン・アサンジ氏との確執や、滞在先であるロシアの情報機関との緊密なやり取りも赤裸々に告白されています。彼は現在もロシアに留まっていますが、これは決して本意ではなく、米国の機密情報をロシア側に渡した事実もないと強く主張しています。国を裏切ったのではなく、自由な市民のために動いたという彼のプライドが垣間見えるエピソードです。
自伝という性質上、多少の自己弁護が含まれている印象は否めませんが、全体を通して非常に冷静かつ淡々とした筆致で描かれています。だからこそ、彼がなぜ過酷なリーク、つまり内部告発の道を選ばざるを得なかったのかが深く納得できる構成になっています。国家による監視の目から、私たちはどのように身を守るべきなのでしょうか。
編集部としては、この本は単なる暴露本ではなく、現代を生きる私たちへの警告の書であると考えます。事件から時が流れた今、私たちは利便性と引き換えに、あまりにも多くのプライバシーを差し出しているのかもしれません。政府による監視体制と国民の安全保障のバランスについて、一人ひとりが当事者意識を持って真剣に見つめ直すべきタイミングが訪れているのではないでしょうか。
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