インターネットを閲覧していたら、気付かないうちに自分のパソコンが他人のために働かされていた。そんな驚きの事件に、司法の場から新たな判断が下されました。自身のウェブサイトに、閲覧者のパソコンの処理能力を無断で使用して暗号資産を採掘するプログラムを設置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われたウェブデザイナーの男性に対し、東京高等裁判所は2020年2月7日、一審の無罪判決を覆し、罰金10万円の有罪判決を言い渡したのです。
この事件の核心にあるのが「マイニング(採掘)」という専門用語です。暗号資産には銀行のような中央管理者が存在しないため、取引の記録が正しいかどうかを検証する膨大な計算作業が必要になります。この計算を手伝った有志に対して、報酬として新たな仮想通貨が支払われる仕組みを、金鉱の採掘になぞらえてそう呼びます。今回の事件では、効率的に報酬を得るために、他人の端末のパワーを無断で拝借するプログラムが使われました。
問題となったプログラムは「Coinhive(コインハイブ)」と呼ばれるものです。被告の男性は2017年10月から2017年11月にかけて、自身のサイトにこれを設置し、閲覧者に無断で「モネロ」という仮想通貨を採掘させて報酬を得ていました。2019年3月まで誰もが利用できたこのツールですが、東京高裁の栃木力裁判長は、ユーザーが実行を拒絶する機会が保障されておらず、一定の不利益を与えるため「コンピューターウイルス」に該当すると認定したのです。
一審の横浜地方裁判所は、ウェブサイト運営の資金源になり得る点や、端末への影響が軽微だったことを理由に無罪としていただけに、今回の逆転有罪判決は大きな衝撃を与えました。SNS上では「無断で他人のPCを使うのはやはりアウト」「当然の判決だ」という納得の声が上がる一方で、「これでは新しい技術開発が萎縮してしまう」「ネット広告の掲載と何が違うのか」といった、クリエイター側からの懸念のツイートも数多く見られます。
私は今回の判決について、ユーザーの権利を守る観点からは妥当であると考えます。しかし、何が「不正なプログラム」にあたるのかという境界線が曖昧なままでは、技術者たちが新しい試みを躊躇する原因になりかねません。警察庁はホームページで、閲覧者に明示せず設置した場合は犯罪になる可能性があると警告していますが、今後は開発者が安心して挑戦できるような、より明確で時代に即した法的なガイドラインの整備が強く求められるでしょう。
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