化学業界の老舗企業であるダイセルが、大きな変革の舵を切りました。2019年6月に同社のトップへと就任した小河義美氏は、従来の形にとらわれない大胆な組織再編を推し進めています。これまでの縦割りだった組織を、顧客のニーズごとに対応できる「顧客単位」へと生まれ変わらせる試みです。ビジネスの現場では、市場の変化に素早く対応するための柔軟性が求められる中、この斬新な決断は多くの業界関係者から注目を集めています。
小河氏は、1983年に大阪大学基礎工学部を卒業後、ダイセル化学工業(現在のダイセル)に入社しました。大学で学んだ「化学工学」の知見を活かし、技術者として機能材料の開発や化学プラントの設計に長く携わってきた経歴を持ちます。ちなみに化学工学とは、実験室で生まれた新しい素材を、安全かつ効率的に大量生産するための仕組みや装置をデザインする、ものづくりの根幹を支える大変重要な学問分野です。
長年にわたり現場の最前線である工場で汗を流してきた小河氏ですが、そのキャリアにおいて大きな転機が訪れます。それは1990年、広島県にある大竹工場の労働組合支部長に就任したことでした。経営陣と真摯に向き合い、時には激しい議論を交わす中で、それまでの技術者という単一の視点から脱却します。会社を俯瞰して捉えるという、経営トップに不可欠な多角的な視野をこの時期に養ったのです。
その後は順調にキャリアを重ね、2011年に取締役に、2017年には取締役専務執行役員へと昇進しました。そして2019年6月に満を持して社長へと就任し、現在に至ります。兵庫県出身で現在60歳という脂の乗ったリーダーが放つ変革への熱意に対して、SNS上では「現場を熟知している技術者出身だからこそ、実効性のある改革ができるはず」「労組での経験がある社長なら社員の心に寄り添ってくれそう」といった期待の声が多数寄せられています。
私自身の見解といたしましては、この顧客単位への組織再編は、激動の時代を生き抜くために極めて理にかなった戦略だと確信しています。いくら優れた技術や製品があっても、それが顧客の求める形で迅速に届かなければ意味がありません。現場の苦労と経営の難しさの双方を身をもって知る小河社長だからこそ、組織の壁を取り払い、全社一丸となった「真の顧客第一主義」を実現できるのではないでしょうか。これからのダイセルの進化から目が離せません。
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