東京五輪の米国ゴルフ代表争いが大激戦!ウッズを脅かすベテランの逆襲と辞退者が生むドラマの行方

アメリカの男子ゴルフツアーが、かつてないほどの熱気に包まれています。2020年2月に開催された「ウェイストマネジメント・フェニックス・オープン」で、劇的な逆転劇が演じられました。ウェブ・シンプソン選手が最終盤で見事な連続バーディーを決め、プレーオフの末に2018年5月以来となる感動的な勝利を飾ったのです。この勝利が、来る東京オリンピックのアメリカ代表の座を巡る戦いを一気に混沌とさせる引き金になりました。

オリンピックのゴルフ競技における出場枠の決定には、「世界ランキング」が大きな鍵を握っています。これは過去2年間の成績を数値化して世界中の全選手を順位付けしたもので、実力を示す最も残酷で確かな指標です。通常は1カ国につき最大2人しか出場できませんが、世界ランク15位以内に多くの選手を抱える強豪国だけは、特例として最大4人までの出場が認められています。選手層の厚いアメリカはこの条件を余裕で満たしている状態です。

当時の状況に目を向けると、アメリカの4枠目を巡る争いは、まさに針の穴に糸を通すような大激戦となっていました。4枠目の当落線上に君臨していたのは、誰もが知るレジェンド、世界ランク6位のタイガー・ウッズ選手です。そのすぐ後ろをパトリック・カントレー選手やザンダー・シャウフェレ選手が猛追していました。SNS上でも「4枠目を誰が勝ち取るのか夢のようだ」「ウッズを五輪で見たい」と、ファンの期待は最高潮に達しています。

そこへ割って入ったのが、34歳のベテランであるシンプソン選手でした。今回の優勝によって、彼は世界ランクを11位から7位へと一気に急上昇させたのです。これには多くのゴルフファンや関係者も「まさかここでベテランが食い込んでくるとは予想外だ」と驚きを隠せません。長年ツアーを見守ってきた人々からも、彼の不屈の精神を称える声が次々と上がっており、代表選考レースはさらに予測不能な展開へと突入しました。

実はシンプソン選手は、これまでに大きな苦難を乗り越えてきた苦労人でもあります。2012年の全米オープンを制した際には一時的に世界ランク5位まで上り詰めましたが、その栄光は長くは続きませんでした。その後は成績が低迷し、一時はトップ100から陥落しそうな危機にまで瀕したのです。その背景には、ゴルフ界を揺るがした「アンカリング禁止」という大きなルール改正の波がありました。

アンカリングとは、パターのグリップやシャフトを体の一部に固定してストロークする打ち方のことです。これにより手元のブレを抑えられるため長尺パターとともに流行しましたが、ゴルフ本来の「クラブを振る」という精神に反するとして、2016年から全面的に禁止されました。元々この打ち方をしていたシンプソン選手は、新ルールへの適応に苦しみ、自分のゴルフスタイルを根本から見直す必要に迫られたのです。

しかし、彼はそこから見事な復活劇を果たしました。2018年5月のプレーヤーズ選手権で復活の狼煙を上げると、昨シーズンは優勝こそなかったものの2位に3回も食い込む安定感を発揮します。今シーズンに入ってからは出場した4戦すべてでトップ10入りを記録しており、現在の勢いは本物と言えるでしょう。一時は崖っぷちに立たされたベテランが、ルールの壁を乗り越えて再び世界のトップ戦線へ返り咲いた姿は、多くの人に勇気を与えています。

ただ、オリンピックの代表選考ドラマを複雑にしているのは、順位争いだけではありません。皮肉なことに、現時点で代表圏内にいるブルックス・ケプカ選手やダスティン・ジョンソン選手といった超大物たちが、大会への不参加を匂わせているのです。ジョンソン選手は「国を代表することは名誉だが、日程が厳しい」と漏らし、ケプカ選手にいたっては「体調次第。四大大会の方が大切だ」と、冷ややかな姿勢を崩しません。

彼らが難色を示すのも、プロゴルファーの超過酷なスケジュールを考えれば無理もないことです。東京五輪が開催される時期は、歴史ある伝統の「全英オープン」と、巨額の賞金が動く米ツアーの年間王者を決める「フェデックスカップ・プレーオフ」という、選手生命をかけた大舞台に挟まれています。地球規模の移動と時差、そして猛暑の中でのプレーは、選手にとってあまりにも肉体的なリスクが大きすぎるのです。

スポーツの祭典であるオリンピックは素晴らしい舞台ですが、プロゴルフ界における最高峰の栄誉は、やはり「メジャー大会(四大大会)」の制覇にあります。テニスなどと同様に、歴史の浅い五輪よりも、100年以上の伝統を持つメジャーのタイトルを優先したいと考える選手が一定数いるのは、プロとしての現実的な選択でしょう。ファンとしては複雑ですが、彼らのキャリアを考えれば尊重すべき意見でもあります。

前回の2016年リオデジャネイロ五輪でも、ジカ熱への懸念を理由に多くのトップ選手が辞退した過去があります。今回も世界ランクの数字の並びだけでなく、選手それぞれの「価値観」や「体調管理」が、誰が東京の舞台に立つかを左右することになりそうです。実力者が辞退すれば、それだけシンプソン選手のような熱意ある伏兵たちにチャンスが回ってきます。最後まで目が離せないドラマを、じっくり見守りましょう。

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