日本取引所グループ(JPX)は、東京商品取引所(東商取)に対するTOB(株式公開買い付け)の開始を、当初予定していた6月末から7月以降に延期すると2019年6月28日に発表しました。最大の焦点は、東商取株の買収価格について両者間で合意に至らなかったことです。しかしながら、2019年10月の完全子会社化、そして来年度上期(2020年4月から9月)の総合取引所発足という目標スケジュールは変えず、引き続き実現を目指す構えです。
この買収延期の報に対し、SNS上では「価格交渉が難航しているようだ」「東商取の電力先物上場への期待が影響しているのでは」「総合取引所の実現は予定通り進むのか」といった、今後の動向を注視する声が多く見受けられます。金融・商品市場のインフラを大きく変える可能性を秘めた今回の統合は、関係者の注目を集めているといえるでしょう。
TOBとは「Take Over Bid」の略で、ある株式会社の株を買い集めて経営権を取得する目的で行われる買収手法の一つです。一般的に、買収する側が買収される側の株式を、期間と価格を公表して、市場外で広く投資家から買い集めます。今回のケースでは、JPXが東商取の株式を買い集め、完全子会社化を目指す手続きなのです。
東商取のTOB価格をめぐって、両者の主張には大きな隔たりがあるようです。東商取は、近年、新規上場商品の不振などから4期連続で最終赤字を計上しており、2019年3月末時点の純資産は約48億円という状況です。このため、JPX側は厳しい業績に見合った、控えめな価格を求めていると推測されます。純資産とは、企業の資産から負債を差し引いた、株主に帰属する資産のことで、企業の財政状態を示す重要な指標の一つです。
一方で東商取側は、電力先物を早ければ今夏にも上場させる計画を進めています。大手電力会社などからの大きな需要が見込めることから、今後の収益性が大きく改善するという見通しに基づいた、より高いTOB価格を提示しているといいます。関係者によると、両社が希望する価格には最大で2倍以上の開きがあるとされており、2019年6月27日の深夜まで交渉が続けられたものの、結局、合意には至りませんでした。
私見ですが、東商取が持つ「電力先物」という将来的な収益の種を、JPXが過小評価しているようには感じられません。しかし、上場前の期待値だけで買収価格を大幅に引き上げるのは、株式会社としての株主に対する責任上、慎重にならざるを得ないJPXの立場も理解できます。市場の健全な発展という大義と、経済合理性のバランスを取ることが、今、両者に求められているのではないでしょうか。
両社は2019年3月に、東商取がJPXの傘下に入る形で統合し、来年度上期には総合取引所を発足させることで基本合意に至っています。今回のTOB開始延期があったとはいえ、10月の完全子会社化という目標は変えていません。TOBの手続き自体は1カ月程度で完了するため、7月中にTOB価格を決定できれば、スケジュールに影響はないという判断でしょう。今後の交渉の行方に、注目が集まります。
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