2019年7月2日未明、香港の政治中枢である立法会(議会)が、デモに参加した若者たちによって占拠され、施設内で大規模な破壊行為が行われた事件は、世界に大きな衝撃を与えました。一夜明けた現地では、建物の一階部分を覆っていた数十枚の窓ガラスが無残に割られ、壁や柱には政府幹部を強く非難する内容の落書きが大きく書きなぐられていたのです。これは、香港政府が推進しようとした**「逃亡犯条例」改正案への反対運動が、いかに激しい怒りへとエスカレートしたかを物語っています。
立法会を取り囲む歩道には、議会で使用されていた机や椅子、さらには若者たちが身を守るために着用していたヘルメットや雨傘などが積み重なり、異様な光景が広がっていました。建物内部に入ると、歴代議長の肖像画の顔の部分がスプレーで黒く塗りつぶされ、防犯カメラやエレベーターの内部、装飾品などが徹底的に破壊されていたといいます。また、議事などに使われたとみられる書類が破られて散乱しており、議場はまさに機能停止に追い込まれた状態です。
この破壊行為について、SNSでは「平和的なデモのイメージが崩れた」「手段は間違っている」といった批判的な意見が一部で見られる一方で、「政府が聞く耳を持たないから、若者は最終手段に出た」「抑圧に対するやむを得ない抵抗だ」と、若者の行動に理解を示す声も多く投稿され、議論を呼んでいます。特に、香港政府トップである林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の即時辞任を要求する声は強く、SNSのハッシュタグにも頻繁に登場しました。
今回の事態は、香港の「一国二制度」、つまり「一つの国でありながら、資本主義制度や自由を保障する異なる制度を持つ」という体制に対する、若者たちの強い危機感の表れだと私は考えます。彼らは、「逃亡犯条例」改正案が可決されれば、中国本土の司法権が香港市民にも及ぶことになり、香港の自由と自治が損なわれると危惧していました。平和的なデモでは政府を動かせなかったという絶望感が、このような破壊的な行動へと繋がってしまったのでしょう。
2019年7月2日午前、事件現場の立法会前は、昨夜の熱気が嘘のように静まり返っていました。周辺を埋め尽くしていた若者の姿はなく、警戒に当たる警官の表情にも、緊迫感よりも疲労や脱力感がにじんでいたようです。当局は、がれきの撤去や損害状況の調査に乗り出しましたが、建物を元の状態に復旧させる見通しは立っていません。このため、香港の重要な立法機能**、すなわち法律を制定したり、政府の予算を審議したりする機能が、今後長期間にわたって停滞する可能性が高いと懸念されます。
近くで清掃業を営むという女性からは、「恐ろしい事態にショックを受けている」「なぜ、話し合いによる平和的な解決ができないのか」といった嘆きの声も聞かれました。今回の事件は、香港社会が抱える根深い対立と、政府と市民の間の溝がいかに深いかを浮き彫りにしています。若者たちの行動は賛否両論を呼びますが、この強烈な抗議行動は、香港の自由を守りたいという切実な願いの裏返しであり、香港政府はこの声を真摯に受け止めるべきでしょう。
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