2019年07月02日、私たちの日常生活に欠かせないQRコードの利便性を劇的に向上させる、画期的な研究成果が発表されました。慶應義塾大学の青木義満教授らのチームが、デンソーアイティーラボラトリと共同で、高速で移動する物体に貼られたQRコードを瞬時に読み取る新技術を開発したのです。この技術は、工場での製品管理や大規模イベントの入退場をよりスムーズに変える可能性を秘めています。
これまで、QRコードを正確に読み取るためには、対象物が静止していることが大前提とされてきました。なぜなら、一般的なカメラでは1秒間に撮影できる回数が限られており、素早く動く物体を捉えようとすると画像が「ブレ」てしまうからです。特に暗い場所ではシャッタースピードが遅くなるため、認識精度が著しく低下するという課題がありました。この制約が、物流現場などの効率化を阻む壁となっていたのです。
そこで研究チームが着目したのが、「イベントカメラ」という次世代の特殊なデバイスです。これは一般的なビデオカメラのように全画素を一定の間隔で記録するのではなく、明るさが変化した画素の情報だけを「イベント」として抽出する仕組みを持っています。数マイクロ秒(100万分の1秒単位)という驚異的な頻度で変化を捉えられるため、高速移動中であっても輪郭がぼやけることなく、鮮明に情報を取得できるのが大きな特徴です。
イベントカメラは消費電力が極めて小さく、明暗の激しい環境にも強いため、ドローンや自動運転車への搭載も期待されています。しかし、このカメラが映し出すのは「明るさの変化点」のみであり、そのままではQRコードの画像として成立しません。青木教授らは、得られた変化データからQRコードの領域を特定し、細部が白か黒かを判別して元の画像を復元する独自のアルゴリズムを構築することに成功しました。
実証実験では、従来のカメラが1秒間に30回程度の撮影でブレて認識不能に陥る速度でも、新手法を用いれば瞬時にウェブサイトのURLを読み取ることができました。SNS上でも「これなら高速道路の料金所やベルトコンベアでも使えそう」「スマホをかざす手間がなくなる未来が楽しみ」といった期待の声が寄せられています。まさに、情報の読み取りにおける「静止」という呪縛を解き放つ発明と言えるでしょう。
現時点ではカメラに対して垂直に捉える必要がありますが、チームは2021年の実用化を目指し、今後は斜めの角度や傾きへの対応を進める計画です。私は、この技術が普及すれば、物理的な「停止」が不要なストレスフリーな社会が実現すると確信しています。高価なイベントカメラも、こうした実用的な用途が増えることで量産が進み、私たちの身近な場所に導入される日が早く来ることを願って止みません。
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