2019年09月14日現在、日本のエネルギー市場は大きな転換点を迎えています。特に注目を集めているのが、将来の電気料金をあらかじめ固定して売買する「電力先物」の存在です。この仕組みは、2000年ごろから欧州で急速に発展を遂げてきました。欧州では日本以上にスポット価格、つまりその時々の市場価格の変動が激しいため、価格急騰のリスクを回避する「ヘッジ」の手段として、先物取引が不可欠なインフラとなっているのです。
ドイツに本拠を置く欧州エネルギー取引所(EEX)は、世界最大級の取引量を誇る市場として知られています。2018年度のデータを見ると、ドイツとオーストリアを合わせた電力取引量は1946テラワット時に達しました。ここで使われる「テラ」という単位は1兆を意味しますが、なんと両国の実際の電力消費量の約3倍もの規模で取引が行われている計算になります。市場がいかに活発に動いているかが、この数字からもはっきりと伺えるでしょう。
欧州でこれほどまでに取引が浸透した背景には、電力会社同士が直接価格を決めて売買する「相対(あいたい)取引」の歴史があります。この一対一の契約を仲介する過程で、多くの金融機関が電力に関する膨大な情報を蓄積していきました。その知見を武器に、銀行などの投資家が積極的に先物市場へ参入したことが、市場の流動性を飛躍的に高める原動力となったのです。専門家の分析によれば、この「情報の集約」こそが普及の鍵だったと言えます。
日本市場の潜在能力とリスク管理の新たな形
翻って日本国内を見渡すと、不特定多数が参加する取引所での売買よりも、まずは顔の見える相手との「相対取引」が普及しやすいとの予測が立てられています。しかし、ここで大きな壁となるのが、取引相手が契約を守れなくなる「信用リスク(債務不履行)」の問題です。せっかく価格を固定しても、相手の経営が悪化して電気が届かなければ意味がありません。この懸念を解消するため、東京商品取引所は画期的な仕組みを導入しました。
具体的には、取引所傘下の「清算機関」が間に入ることで、万が一の際の債務を肩代わりし、取引の安全性を保証するのです。この仕組みには世界的な巨頭であるEEXグループも関心を寄せており、2020年前半には日本でのサービス開始を予定しています。彼らが日本に熱視線を送る理由は、単純に市場が巨大だからです。日本の年間電力消費量は約975テラワット時と、ドイツの約2倍に相当するポテンシャルを秘めています。
SNS上では「電気代が株のように動くのは不安だ」という声も散見されますが、こうした先物取引が活発になれば、最終的に一般消費者の料金安定にも繋がるはずです。私は、金融の手法がエネルギーの世界に融合することは、日本の電力安定供給における「最後のピース」だと考えています。欧州の成功例を見れば、日本が世界最大の電力市場へと成長するシナリオは、決して夢物語ではないでしょう。これからの展開から目が離せません。
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