2019年5月下旬に実施された欧州議会選挙の結果を受け、議会内での勢力図が大きく変化し、各会派の動きが非常に活発になっています。中でも注目を集めているのが、かねてより欧州連合(EU)に対して懐疑的な立場を取ってきた極右政党などのグループが、同年6月13日に新たな会派「アイデンティティーと民主主義(ID)」を結成したことです。彼らの議席数は、選挙前の約2倍にまで急増し、定数751の欧州議会において、一気に第4の勢力へと躍り出る見通しとなりました。この新会派の誕生は、今後のEUの政策決定に大きな影響を与えることが予想されます。
ID会派の中心的な主張は、移民・難民政策の抜本的な見直しやEUの権限を各国に戻すことなど、強硬な国家主権重視の姿勢を明確に打ち出しています。例えば、フランスで第1党となった「国民連合(RN)」のルペン党首は、会見で「我々は国家主義者のグループとして欧州議会で最大の勢力になる」と力強く宣言しました。RNに加え、イタリアで最大勢力である「同盟」、そしてドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」など、9カ国の政党から議員が集結し、その総勢は73議席にも上ります。さらに、英国のEU離脱、いわゆるブレグジットが実現すると、議席の再配分により76議席に増加し、「緑の党・欧州自由連合」などの環境派会派を抜いて、単独で第4会派となる見込みです。
新会派「ID」が目指す政策の柱は、移民・難民の欧州域内への流入を大幅に制限するための制度改正であり、具体的には国境管理の強化やイスラム教徒に対する規制の厳格化が含まれています。また、彼らはEUが加盟国の主権、すなわち国の持つ決定権限を不当に奪っていると厳しく批判し、その権限を各加盟国へと返還することを強く要求しています。この動きは、EUの統合を推進したい親EU派との間で、今後激しい議論を巻き起こすことは必至でしょう。私の意見としては、多文化共生や人権尊重というEUの理念と、各国のアイデンティティーと主権の尊重という相反する価値観が、欧州議会という場でいよいよ本格的にぶつかり合う時代に入ったと言えるでしょう。
このID会派の結成は、SNSでも大きな反響を呼びました。彼らの支持者からは「自分たちの国の主権を守るための当然の流れだ」「EUの独裁に終止符を打ってくれる」といった期待の声が多く寄せられている様子です。一方で、EUの理念を支持する人々やリベラル層からは、「排他的なナショナリズムの台頭だ」「ヨーロッパの分断を深める危険な動きだ」といった強い懸念を示す意見が交錯しています。この論争は、欧州の将来像を巡る、市民の関心の高さを物語っていると言えるでしょう。
欧州議会における「会派」とは、考え方や政策が近い政党が、国境を超えて集まるグループのことです。議会では、この会派ごとに発言力や役職の配分などが決まるため、多くの議席を集めて大きな会派を結成することは、政策実現のために不可欠な戦略となります。今回のID会派の結成は、EU全体が抱える移民問題や主権のあり方といった、根深いテーマに対する民意の多様化を象徴していると私は考えます。親EU派の中道リベラル会派にもマクロン仏大統領らの政党が正式に合流するなど、議会内の再編は続いており、2019年6月現在の欧州政治はまさに大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。

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