現代社会において、デジタル機器の急速な普及はアナログな文房具にとって代わる脅威だと囁かれてきました。2019年10月14日現在、世界各地で「手書きの文化は衰退するのではないか」という議論が交わされています。しかし、実際には文房具が持つ柔軟な適応力が、新しいテクノロジーを飲み込む形で独自の進化を遂げているのです。
例えば、ドイツのハンブルクで開催された老舗ノートブランド「ロイヒトトゥルム」のカンファレンスでも、デジタルとの共存が大きなテーマとなりました。私たちが想像する以上に、文房具とインターネットは相性が良く、むしろデジタルツールが文房具の魅力を再発見させるきっかけを作っていると言えるでしょう。
SNSで拡散される新しい勉強スタイル「スタディープランナー」
2018年の春ごろから日本の若者の間で爆発的な人気を博しているのが、韓国発祥の「スタディープランナー」という学習管理法です。これは単に勉強の計画を立てるだけでなく、その記録を色鮮やかに彩り、InstagramなどのSNSに投稿して共有する文化を指します。他者の目に触れることで適度な緊張感が生まれ、学習のモチベーション維持に繋がっているようです。
この流行により、意外な文房具が脚光を浴びています。ゼブラの「マイルドライナー」は、発売から10年が経過した事務用のマーカーでしたが、SNSでの露出を機に売上を劇的に伸ばしました。「マイルド」という言葉通り、蛍光ペン特有の派手さを抑えた目に優しい色合いが、ノートを美しく装飾するのに最適だと評価されたのです。
SNS映え、つまり「写真に撮った際の見栄えの良さ」を重視するデジタルネイティブ世代にとって、ペンの外観の可愛らしさも重要な選定基準となっています。機能性だけでなく、所有欲を満たし、画面越しに「素敵だ」と思われるデザインが、文房具の新たな価値基準となっている点は非常に興味深い現象です。
タスク管理を超えた芸術「バレットジャーナル」の波
世界中で旋風を巻き起こしている「バレットジャーナル」も、SNSとの密接な関わりなしには語れません。これは箇条書きを基本としたタスク整理術ですが、ファンたちは自分の手帳のレイアウトや愛用する文房具の写真をアップし、活発な情報交換を楽しんでいます。効率化のためのツールが、自己表現のためのキャンバスへと変貌を遂げているのです。
文房具は、水や空気のように私たちの生活に溶け込んでいる存在だからこそ、どんな新しいメディアとも結びつくことができるのでしょう。メールや文書作成ソフトが普及したことで、確かに事務的な手書きの機会は減少しました。しかし、感情を込めたり、クリエイティビティを発揮したりする場において、アナログの持つ温もりは不可欠なままです。
私は、デジタルが進化すればするほど、人々は反動として手触りのある「書く体験」を求めるようになると考えています。アジアのデジタルネイティブ世代が日本の精巧な文房具を愛してやまない事実は、その証明ではないでしょうか。社会の変化を味方につけ、したたかに進化を続ける文房具の世界から、今後も目が離せません。
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