花王の脱・時間拘束!「ケアよりフェア」な働き方が育児中のフルキャリ女性を救う理由

「今日は早く帰って子供と過ごします」。2019年09月、花王グループで働く3児の母、関根牧子さん(45歳)は、晴れやかな表情で同僚に告げ、午後16時にオフィスを後にしました。これは急な体調不良による早退ではありません。連日の残業や付き合いが続き、寂しさを募らせていた小学生のお子さんを思いやる、前向きな選択なのです。

かつての日本企業では、育児中の社員が早く帰る際には、周囲への申し訳なさや「特別扱い」への引け目を感じることが少なくありませんでした。しかし、花王が2018年07月に導入した新しい勤務制度が、そんな職場の空気を劇的に変えています。同社は、1日の最低勤務時間の縛りさえも取り払った、進化型のフレックスタイム制をスタートさせたのです。

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「特別扱い」から「お互い様」へ、フェアな仕組みの誕生

この制度の画期的な点は、育児や介護といった特定の理由がなくても、全社員が1時間単位で労働時間を調整できることにあります。関根さんは、早く帰宅した分の時間を別の日に振り替えて働くことで、仕事の責任を果たしながら家庭とのバランスを保っています。周囲も同様の権利を持つため、「自分だけが優遇されている」という居心地の悪さは完全に解消されました。

SNS上では、こうした企業の姿勢に対して「これこそが真の働き方改革だ」「理由を問わない柔軟性が、現場のギスギスした不満をなくす鍵になる」といった共感の声が相次いでいます。特定の層を保護する「ケア」の視点から、全員を等しく尊重する「フェア」な仕組みへの移行は、現代のビジネスシーンにおいて避けて通れない潮流と言えるでしょう。

ここで注目したいのが「フレックスタイム制」という言葉です。これは、一定の期間内で総労働時間を決め、日々の始業・終業時刻を労働者が自由に選べる制度を指します。花王の事例は、そこからさらに一歩踏み込み、コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)さえも撤廃した、極めて自由度の高い働き方を実現しているのが大きな特徴です。

二元論を打破する「フルキャリ」層の台頭

野村総合研究所の上級コンサルタント、武田佳奈さん(40歳)は、働く女性を巡る企業の認識がアップデートされていないと警鐘を鳴らします。これまでは、昇進を目指して猛烈に働く「バリキャリ」か、家庭を優先して仕事をセーブする「ゆるキャリ」かという、極端な二元論で語られることが多すぎたのではないでしょうか。

しかし現在、現場で増えているのは、仕事も家庭も妥協したくないと願う「フルキャリ」層です。彼女たちは決して意欲が低いわけではなく、限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮しようとする、極めて生産性の高い存在です。時間ではなく成果で評価される文化こそが、彼女たちの持つ潜在能力を最大限に引き出すはずです。

私自身の視点としても、この「フェアであること」への転換は、組織の持続可能性を高める最良の手段だと確信しています。誰かの犠牲の上に成り立つ制度は、いつか限界を迎えます。性別やライフステージに関わらず、誰もが自分の裁量で「時間のやりくり」を最適化できる社会こそが、これからの日本を支える新しいスタンダードになるに違いありません。

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