日本の産業を支える大動脈である鉄鋼業界に、いま激震が走っています。国内の高炉大手3社が2020年3月期の業績見通しを相次いで下方修正し、厳しい現実が浮き彫りとなりました。特にJFEホールディングスが2019年11月12日に発表した通期予想は、純利益が前期比80%減という衝撃的な内容です。世界経済の減速が影を落とす中、鉄の巨塔たちがかつてない苦境に立たされています。
ネット上では「JFEの利益ゼロは信じられない」「日本のものづくりは大丈夫か」といった驚きの声が広がりました。これまで安定した収益を誇ってきた鉄鋼事業が、なぜここまで急速に冷え込んでしまったのでしょうか。その背景には、一企業の努力だけでは抗いきれない複合的な要因が絡み合っています。編集部としても、この急激なブレーキは日本の景気全体を左右する重大な局面だと捉えています。
世界景気の減速と「安値攻勢」が招いた利幅の縮小
苦境の最大の要因は、世界的な鋼材需要の減退と市況の悪化にあります。ここでいう「市況」とは、市場における取引価格の動向を指しますが、現在はロシアやインドなどから安価な鋼材がアジア市場へ大量に流入している状態です。これにより販売価格が抑え込まれる一方で、原材料のコストは高止まりしています。この「利幅」、つまり売値と原価の差額が削られていることが、各社の収益を激しく圧迫しているのです。
特にJFEは、2003年の発足以来守り続けてきた鉄鋼事業の黒字が、今期はゼロになる見通しを示しました。寺畑雅史副社長が「底打ちの兆しが見えない」と語る通り、産業機械や建築向けといった国内需要の弱含みに加え、海外の自動車向け需要も振るいません。これを受けて同社は、粗鋼生産量を計画から100万トン減らす生産調整を決断しました。需要がない中で作り続けるリスクを回避する苦渋の選択と言えるでしょう。
相次ぐ災害と設備トラブルが追い打ちをかける
追い打ちをかけたのが、2019年に発生した大型台風などの自然災害や相次ぐ設備トラブルです。日本製鉄では、台風による設備の破損や火災事故の発生により、その復旧コストが利益を大きく削る形となりました。工場の稼働が止まれば損失が出るだけでなく、修理のために莫大なキャッシュが出ていきます。こうした不測の事態が、市場環境の悪化という弱り目に祟り目の状況を作り出してしまいました。
神戸製鋼所も例外ではなく、鉄鋼のみならずアルミ・銅事業でも自動車や半導体分野の需要減に直面しています。今期2度目となる下方修正を余儀なくされ、経常利益の見通しはついにゼロまで引き下げられました。経済の先行指標とも呼ばれる鉄鋼や素材の冷え込みは、実体経済が予想以上に厳しい局面に差し掛かっていることを警告しているのかもしれません。
構造改革への決断と未来への布石
この難局を乗り切るため、各社は組織の再編に動き出しています。日本製鉄は2020年4月1日付で、全国16カ所の製鉄所組織を6つに集約する大規模な再編を断行する予定です。生産の最適化を図り、固定費を削減して収益力を高める狙いがあります。一方のJFEは、現状の2製鉄所体制を維持しつつ、まずは生産調整による在庫の適正化を優先する構えを見せています。
鉄鋼各社が示す「利益ゼロ」という数字は、単なる一時的な不調ではなく、産業構造の変化や国際競争の激化を象徴しているように感じます。かつて「鉄は国家なり」と言われた通り、鉄鋼業の再起は日本経済の復活に不可欠です。厳しい冬の時代にどれだけ筋肉質な体質へ改善できるかが、次の成長期に再び高く飛ぶための鍵となるでしょう。今後の各社の巻き返しに期待が寄せられています。
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