北陸3県に本店を構える地方銀行の2019年4月〜9月期決算が、2019年11月12日にすべて出そろいました。驚くべきことに、本業の収益力を示す「実質業務純益」において、全6行が揃って増益を達成するというポジティブな結果となっています。SNS上では「地銀苦境と言われる中で北陸勢は健闘している」と称賛の声が上がる一方で、その内実を冷静に分析する厳しい意見も散見されており、地域の経済インフラを支える銀行への関心の高さが伺えます。
しかし、数字上の華々しさとは裏腹に、銀行経営の現場には緊張感が漂っています。増益の主な要因は、保有している有価証券の利息や配当金、さらには外国債券による運用益が中心です。銀行にとっての本来の稼ぎ頭である「貸出金利回り」、つまり企業や個人にお金を貸して得られる金利の割合は、残念ながら全行で低下が続いています。福邦銀行の渡辺健雄頭取が「本業以外の収益が大きく、厳しい環境は変わらない」と語る通り、手放しでは喜べない状況なのです。
ここで注目したいのが「コア業務純益」という指標です。これは、投資信託の解約益や債券の売却益といった一時的な要因を排除し、より純粋に銀行の基礎的な稼ぐ力を示すものです。例えば福邦銀行では、連結純利益を大きく伸ばした一方で、このコア業務純益は前年同期の約半分に留まりました。超低金利政策の長期化によって、預金と貸出の利ざやで稼ぐという伝統的なビジネスモデルが、いよいよ限界に近づいていることを物語っているのではないでしょうか。
さらに、外部環境の不透明さも影を落としています。世界を揺るがす米中貿易摩擦の影響は、北陸の製造業にも確実に波及しているようです。富山銀行の斉藤栄吉頭取は、エリア内の景気減速を肌で感じていると危機感を露わにしました。これに伴い、取引先の倒産リスクに備える「一般貸倒引当金」を積み増す動きが各行で加速しています。不測の事態に備えて守りを固める姿勢からは、嵐の前の静けさを感じずにはいられません。
北陸財務局も、2019年10月に景気の総括判断を6年9カ月ぶりに下方修正しました。これまでは「拡大しつつある」としていた表現を、「拡大のテンポが緩やかになっている」へとトーンダウンさせています。北陸銀行の庵栄伸頭取が指摘するように、かつての右肩上がりの成長モデルは過去のものとなりました。今後は、人口減少やデフレマインドが定着した社会において、いかに持続可能な金融サービスを維持していくかという、重い課題を突きつけられています。
追い打ちをかけるように、2019年10月の台風19号による北陸新幹線の浸水被害も観光業に深刻なダメージを与えています。北国銀行の安宅建樹頭取は、新幹線の全線復旧後も客足の戻りが鈍い現状に厳しい表情を浮かべました。こうした事態を受け、各行は利息収入に頼らない「手数料ビジネス」へのシフトを急いでいます。資産運用の相談や企業の経営改善を支援するコンサルティング業務の強化こそが、地銀が生き残るための唯一の処方箋となるでしょう。
筆者の見解としては、今回の増益は「一時的な追い風」を巧みに捉えた結果であり、地銀の構造的な問題が解決したわけではないと考えます。しかし、苦境の中でも手数料収入を伸ばし、地域企業に寄り添うコンサルティングを強化する姿勢は評価すべきです。銀行が単なる「金貸し」から「地域のパートナー」へと進化できるかどうかが、北陸経済の未来を左右する鍵となります。私たちは、数字の裏側にある彼らの変革への意志を注視していく必要があります。
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