2019年11月14日現在、世界が固唾を呑んで見守る米中交渉は、まさに嵐の前の静けさと言えるかもしれません。第一段階の合意を目指し、両国は最終調整の段階に入っています。トランプ大統領としては、2020年11月の大統領選挙を睨み、支持基盤である農家のために農産物の輸出拡大を急ぎたいのが本音でしょう。
しかし、仮に一部の合意に至ったとしても、これで一件落着とは到底思えません。知的財産権の保護や、中国政府による自国ハイテク産業への巨額の補助金といった根本的な問題は、棚上げされたままなのです。SNS上でも「これでは一時的な休戦に過ぎない」「本質的な解決には程遠い」といった冷静な声が目立っています。
経済戦争から「体制戦争」への変質
米国側、特にライトハイザー通商代表部代表らは、中国が不公正な慣行を簡単に改めるとは考えていないようです。不十分な合意で妥協するよりは、関税という強力な武器を維持し、中国に圧力をかけ続けるべきだという考えが強まっています。これは単なるお金のやり取りではなく、デジタル時代の覇権をかけた死闘なのです。
さらに注目すべきは、米国の攻勢がこれまでの経済の枠組みを超えようとしている点でしょう。政府内の一部では、中国共産党そのものを揺さぶり、その力を削ごうとする「体制戦争」の機運が密かに高まっています。ハイテク大手のファーウェイなどを禁輸リストに載せる手法は、もはや経営への打撃というレベルを超えています。
ここでいう「エンティティー・リスト(EL)」とは、アメリカの安全保障を脅かす恐れがあるとして、輸出が厳しく制限される企業名簿のことです。これに掲載されることは、最先端の技術や部品を断たれることを意味し、企業にとっては死活問題となります。まさにハイテク分野における現代の兵糧攻めと言えるでしょう。
冷戦の教訓とアジアの緊張
2019年10月15日には米下院で「香港人権・民主主義法案」が可決されるなど、人権問題を通じた揺さぶりも加速しています。ウイグル族への弾圧問題も含め、これらの動きは共産党政権の正当性を突くものです。編集者の私としては、米国が単なる利益誘導ではなく、相手の存立基盤そのものをターゲットにし始めた点に戦慄を覚えます。
かつての米ソ冷戦時、1981年に誕生したレーガン政権が対ソ連封じ込めから「体制変更」へ舵を切った歴史を彷彿とさせます。もちろん、巨大な経済力を持つ現在の中国を混乱させることは、世界経済へのリスクが大きすぎます。しかし、争いがエスカレートする中で、双方が引き返せない地点まで突き進む懸念は拭えません。
米中という二大巨頭の対立が本格的な冷戦へと発展すれば、アジア太平洋地域の平和は一気に不安定化するはずです。2019年11月というこの時期、私たちは単なる貿易摩擦のニュースとしてではなく、世界のシステムが根本から変わろうとしている瞬間を目撃しているのかもしれません。
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