2019年10月、世界中の人々から惜しまれつつこの世を去った緒方貞子さん。彼女は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップとして、紛争地で苦しむ人々のために奔走し、日本人女性が国際舞台の最前線で活躍できることを証明してくれました。緒方さんの気高い背中を見て育った世代が今、国連の各機関で目覚ましい飛躍を遂げていることをご存じでしょうか。
外務省が発表した2019年1月1日時点のデータによれば、国連機関で専門職以上として勤務する日本人は、女性が542名に達しています。これは2001年と比較するとなんと2.5倍という驚異的な伸び率です。さらに驚くべきは、幹部クラスにおける女性の割合で、実に47.1%を占めています。日本国内の一般的な組織に比べ、圧倒的な存在感を放っているといえるでしょう。
日本の常識を覆す!なぜ国連は女性にとって最高の舞台なのか
SNSでは「日本の企業も見習ってほしい」「優秀な人材が海外に流出しているのではないか」といった声が数多く寄せられています。日本国内の公務員や民間企業における女性の管理職比率が、2019年時点でも依然として低い水準に留まっている現状を見れば、その反応も頷けます。なぜ、これほどまでに日本人女性たちは国連という場所でその才能を開花させているのでしょうか。
その鍵は、国連が掲げる「ジェンダー・メインストリーミング」という概念にあります。これは、すべての政策や活動において男女平等の視点を取り入れる考え方のことです。国連では、フレックスタイム制や在宅勤務といった柔軟な働き方が当たり前のように整備されています。育児とキャリアの両立を阻む「見えない壁」が存在しないことが、彼女たちの挑戦を後押ししているのです。
かつて民間企業で働いていたある職員は、深夜までの残業や宴会での振る舞いといった日本独自の「組織文化」に違和感を覚え、国連へと転身したといいます。国連児童基金(UNICEF)などでは、子育ては女性だけの役割という固定観念がありません。男性も積極的に育児制度を活用し、互いに協力し合う文化が根付いていることが、国連の大きな魅力となっているのでしょう。
次世代へつなぐバトンと日本が抱えるこれからの課題
2017年5月には、中満泉氏が日本人女性として初めて事務次長という要職に就任しました。これは事務総長、副事務総長に次ぐ、文字通りのナンバー3といえるポジションです。緒方さんが切り拓いた道を、確かな実力を持った女性たちがさらに広げ、深めている現状は、同じ日本人として誇らしく、また心強い限りです。
一方で、課題も浮かび上がっています。女性の躍進が目立つ一方で、日本人男性の国連進出は緩やかな伸びに留まっており、国連全体における日本人職員の数は、拠出金の負担額に見合った「望ましい数」にまだ届いていません。日本政府は、若手の人材を国際機関に送り出す「JPO派遣制度」の拡充などを通じて、性別を問わず世界で戦える人材の育成に力を注いでいます。
私は、現在のこの状況を「日本社会への警鐘」だと捉えています。優秀な女性たちが外の世界に居場所を求めるのは、日本国内の組織がいまだに古い価値観に縛られている裏返しでもあるからです。緒方貞子さんがかつて見せた、国籍や性別を超えて「一人の人間」として困難に立ち向かう姿勢こそ、今こそ日本の組織全体が必要としているものではないでしょうか。
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