日本の技術力の象徴とも言える次世代スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」がいよいよその産声を上げました。2019年12月02日の午後、石川県かほく市にある富士通ITプロダクツにおいて、輝かしい門出を祝う出荷式典が華やかに執り行われたのです。
理化学研究所と共同で開発を進めてきた富士通の時田隆仁社長は、式典の場で力強く語りました。この「富岳」は、地震などの防災シミュレーションや新薬の開発といった最先端の研究はもちろんのこと、多種多様な企業のビジネスシーンにおいても、革新的な変化をもたらす潜在能力を秘めていると確信しています。
SNS上では、かつて世界一に輝いた「京(けい)」の後継機ということもあり、「日本の誇りを取り戻してほしい」「名前に込められた富士山のような雄大さに期待」といった熱いエールが続々と寄せられており、国民からの注目度の高さがうかがえます。
圧倒的な「省電力性能」がもたらす計算機界のパラダイムシフト
驚くべきは、その圧倒的な効率性でしょう。かつての名機「京」では100ラックを要した膨大な処理能力を、この「富岳」はわずか1ラックというコンパクトなサイズで実現してしまいました。まさに技術の結晶と言える進化を遂げているのです。
富士通が今回、計算速度の単純な競争よりも重視したのが、消費電力をいかに抑えるかという「省エネ性能」です。近年のスパコン開発においては、性能を上げようとプロセッサーを増やすほど膨大な電力が必要となり、供給が追いつかずに性能が頭打ちになるという課題に直面していました。
そこで「富岳」は、スマートフォンの設計などでも定評のある英アーム・ホールディングスの仕様をCPU(中央演算処理装置)に採用しました。これにより、ライバル機の約3分の1という驚異的な低消費電力を達成し、大規模なシステム運用をより現実的なものに変えたのです。
CPUとは、コンピューターにおける「頭脳」に当たる中枢部品のことです。一般的なスパコンは、画像処理に特化したGPU(画像処理半導体)を併用して速度を稼ぎますが、「富岳」はあえて汎用性の高いCPUのみで構成し、プログラミングのしやすさと効率性を両立させました。
「名より実」を追求した日本独自の生存戦略への期待
この「急がば回れ」とも言える独自の戦略は、早くも目に見える結果を残しています。2019年11月に発表された、スパコンの電力効率を競う世界ランキング「グリーン500」において、富岳の試作機は見事に第1位の栄冠に輝きました。
アメリカや中国が計算速度の頂点を競い合う中で、日本は環境性能や使い勝手という「実利」を優先する道を選びました。これは、複雑な計算を必要とする現代のビジネスや研究現場において、極めて賢明で持続可能な選択であると私は評価しています。
単なる計算の速さだけでなく、どれだけ社会に役立てるかという視点は、これからのテクノロジーに不可欠な要素です。名前の由来となった富士山のように、広く人々に親しまれ、その裾野を広げるような活躍を見せてくれることを期待せずにはいられません。
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