あいみょんがシニア層の心を掴む理由とは?「マリーゴールド」異例のヒットに見るストリーミング時代の新戦略

忘年会シーズンの喧騒が響く2019年12月06日、カラオケボックスで世代を超えて歌い継がれているのは、シンガーソングライターのあいみょんさんです。メジャーデビューから月日が流れましたが、彼女の人気は一時のブームに留まらず、今や社会現象として定着しています。音楽ジャーナリストの柴那典氏による緻密な分析を紐解くと、そこには現代ならではのヒットの方程式が鮮やかに浮かび上がってくるでしょう。

彼女の代表曲である「マリーゴールド」の売れ方は、これまでの音楽業界の常識を覆すほど異例なものでした。通常、ヒット曲にはテレビドラマや映画、CMとのタイアップという強力な「起爆剤」が欠かせません。しかし、この楽曲にはそうした背景が一切なかったのです。2018年にブレイクの兆しを見せた際も、メディアの紹介が先行する形で、じわじわと世間に浸透していった点は特筆すべきでしょう。

発売直後のCDランキングでは26位と控えめな滑り出しでしたが、その主戦場はデジタル空間にありました。インターネットを通じて定額で音楽を聴き放題にする「ストリーミングサービス」で、再生回数が爆発的に伸びたのです。音楽番組に初登場した際の紹介も、CDの売上ではなく配信サイトでの首位獲得という形でした。これは所有から利用へと変化した、新しい時代の音楽の楽しみ方を象徴しているのではないでしょうか。

SNS上では「なぜか懐かしい気持ちになる」「親と一緒に聴ける唯一のアーティスト」といった声が数多く寄せられています。10代や20代の若者だけでなく、50代から60代のシニア層までを虜にしている点が彼女の真骨頂です。日本は海外と比較してCD文化が根強いと言われてきましたが、音楽を愛するシニア層にとって、今やストリーミングは日常に欠かせないツールへと進化を遂げているようです。

なぜ彼女の音楽は、これほどまでに幅広い世代の琴線に触れるのでしょうか。その理由は、彼女が公言している音楽的ルーツに隠されています。吉田拓郎さんや浜田省吾さんといった、1970年代から80年代を彩ったレジェンドたちの系譜を継いでいるのです。さらにその影響を受けたMr.Childrenやスピッツを聴いて育った世代にとっても、彼女のメロディは極めて親和性が高いものと言えるでしょう。

私は、彼女の人気こそが「文化の正当な継承」であると感じています。単に古いものを模倣するのではなく、伝統的なフォークやロックの魂を現代的なサウンドでリモデルする手法は、職人芸に近いものがあるでしょう。先端技術であるストリーミングを入り口にしながら、その中身は普遍的な「歌」の力で勝負している姿勢には、クリエイターとしての強い意志と誠実さを感じずにはいられません。

若者の間でも、YouTubeを通じて過去の名曲に触れることが当たり前となり、世代間の情報格差は消滅しつつあります。昭和の歌を若者が楽しみ、最新のヒット曲をシニアが口ずさむ光景は、今の時代だからこそ実現した美しい文化の融合です。国境や年齢の壁を軽々と飛び越えていく「あいみょんパターン」は、これからのエンターテインメントが進むべき一つの正解を示しているに違いありません。

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