日本の国土を美しく彩る森林は、実に面積の約3分の2を占めています。この豊かな緑を次世代へ引き継ぐため、2019年4月1日に「森林経営管理法」という新たな法律が施行されました。この制度は、手入れが行き届かない森の管理を、市町村が所有者に代わって引き受ける画期的な仕組みです。しかし、その活動を支える大切な財源の配分を巡り、いま地方自治体からは戸惑いと疑問の声が上がっていることをご存じでしょうか。
埼玉県西部に位置する秩父地域は、面積の85%が深い森に包まれています。ここでは2019年4月に専門組織を立ち上げ、膨大な私有林の現状把握に乗り出しました。新制度の鍵は「所有と経営の分離」にあります。手入れが難しい所有者に代わり、自治体が窓口となって林業を活性化させるのです。2019年11月からは、全国初となる民間事業者への管理委託公募もスタートし、放置されがちな森林を守るための具体的な一歩が刻まれ始めています。
なぜ森のない都会に多額の予算が?配分基準への違和感
この取り組みを支えるのが「森林環境譲与税」です。2024年度から導入される新税に先駆け、国が自治体へ先行して配分を行っています。しかし、2019年9月の初配分では意外な結果が判明しました。森林面積が広大な地方よりも、横浜市や大阪市といった大都市に高額な予算が割り振られたのです。SNS上でも「山を守るための税金なのに、なぜ都会の学校の備品代に使われるのか」といった、制度の目的を問う鋭い反応が見受けられます。
現在のルールでは、配分額の3割が「人口」によって決まります。総務省は「都会で木材を使ってもらうことで需要を増やす必要がある」と説明していますが、現場が最も苦しんでいるのは深刻な「人材不足」です。木を伐る人が足りない地方を差し置いて、消費を優先する基準には首をかしげざるを得ません。筆者の視点としても、森林を守るための財源は、まず第一に「現場の崩壊を防ぐこと」へ最優先で投じられるべきだと強く感じます。
都市と地方の連携が拓く「水害に強い日本」への道
森林の荒廃は、単なる地方の問題ではありません。放置された山が保水力を失えば、近年の猛烈な台風による土砂崩れや水害のリスクは、下流域の都市部にも牙をむきます。秩父市はこの危機感を共有し、東京都豊島区などの姉妹都市と協力して、都会に届いた予算を山の整備に還元してもらう取り組みを始めました。これは、自分たちが住む場所を守るための、非常に理にかなった賢明なパートナーシップと言えるでしょう。
譲与税の使い道には、木材の需要拡大も大切ですが、それ以上に「森を守る現場の強化」が欠かせません。この制度が単なる予算のバラ撒きに終わらず、山を育てる人々の手助けとなるよう、配分基準の柔軟な見直しを願ってやみません。都会と田舎が手を取り合い、日本の豊かな緑を守ることは、私たち全員の安全な暮らしに直結しているのです。2019年、この新しい挑戦が日本の山を再生させる分岐点となるのか、注目が集まっています。
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