2019年11月21日、北海道の銀世界がいよいよシーズン本番を迎えようとしています。今シーズンの大きなトピックは、主要なスキー場の多くでリフト券の価格改定が行われることです。調査対象となった14カ所のうち、実に10カ所で3%を超える値上げが実施されることになりました。
この動きの背景には、急増する訪日外国人客、いわゆるインバウンド需要を確実に取り込もうとする各社の積極的な姿勢があります。SNSでは「ついに北海道も世界標準の価格帯になってきたか」といった驚きの声や、「施設が綺麗になるなら歓迎」という前向きな意見が飛び交っています。
今回、最も大胆な価格改定に踏み切ったのは旭川市の「カムイスキーリンクス」です。2019年度から大人1日券を従来の価格から700円引き上げ、3800円に設定しました。これは率にして23%もの大幅アップとなりますが、そこには市が2014年から投じてきた約27億円という巨額の改修費用が反映されています。
世界を惹きつけるための劇的な進化
カムイスキーリンクスでは、長年使い込まれたゴンドラやリフトを一新し、2018年には自動ICゲートを導入しました。自動ICゲートとは、チケットをかざすだけでリフトの改札を通過できる非接触型のシステムで、混雑緩和に大きな効果を発揮します。まさにスマートな雪山体験の提供です。
さらに、英語や中国語での対応が可能な案内所を設置するなど、ハード・ソフト両面での強化が光ります。こうした努力が実を結び、2018年度の来場者は前年比で25%も増加しました。今年はさらに、星野リゾートなどの大手と連携した広域共通券も発売され、長期滞在を狙う外国人観光客の争奪戦が激化するでしょう。
小樽市の「朝里川温泉スキー場」も、17%の値上げで1日券を3500円としました。しかし、ただ価格を上げたわけではありません。駐車場からロッジまでを結ぶベルト式エスカレーターを新設するなど、数千万円を投じて利便性を追求しています。初めて雪に触れるアジア圏のゲストへの配慮が、随所に感じられます。
地元客への愛と「二極化」するスキー場経営
一方で、価格上昇による地元ファンの離脱を防ぐための知恵も絞られています。星野リゾートトマムでは、1日券を5900円に値上げする一方で、道民限定の特別な割引プランを用意しました。イベント会場で配布される専用のリフト券を活用すれば、通常よりもはるかに安価にウィンタースポーツを楽しめる仕組みです。
また、キロロスノーワールドは1日券の価格を据え置くという、ファンには嬉しい決断を下しました。その代わり、初心者が特定のエリアのみを滑ることができる「ビギナー券」の価格を微増させることでバランスを取っています。ターゲット層ごとに価格設定を細分化する戦略は、非常に現代的な経営手法と言えます。
私は、この値上げラッシュは北海道の観光産業が「安売り」から脱却するための通過点だと考えます。1972年の札幌五輪やバブル期に造られた施設の老朽化は深刻であり、適切な投資と対価の回収は不可欠です。しかし、経営体力のないスキー場が営業休止に追い込まれる「優勝劣敗」の波は、今後さらに強まるはずです。
2019年11月17日には中山峠スキー場が先陣を切ってオープンし、多くのスキー場も22日から23日にかけて段階的に営業を開始します。高品質なサービスを求める世界中のスキーヤーと、地元で愛され続ける文化の両立。北海道の雪山は今、かつてない変革の時を迎えているのです。
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