財務省が2019年12月09日に発表した国際収支統計の速報値によると、日本が海外との取引でどれだけ稼いだかを示す「経常収支」の黒字額が、前年同月と比較して38%も増加しました。総額は1兆8168億円に達しており、これで64カ月連続の黒字を維持していることになります。日本経済の底堅さを物語る数字に、SNS上では「意外と健闘している」という声がある一方で、その内訳に注目する鋭い意見も飛び交っています。
今回の黒字幅拡大を牽引したのは、輸出額から輸入額を引いた「貿易収支」が黒字に転じたことです。前年の同時期は赤字でしたが、2019年10月には2540億円の黒字へと劇的な回復を見せました。しかし、この背景には単純な「輸出の好調」とは言い切れない複雑な事情が隠されています。実は、米中貿易摩擦の長期化によって輸出自体は前年より8%減っており、それ以上に輸入が15%も大きく落ち込んだことが黒字化の主な要因なのです。
輸入がこれほどまでに減少した大きな理由は、私たちが日々利用するエネルギー資源の価格下落にあります。原油価格が円ベースで22%も安くなったことで、輸入額が大幅に抑えられました。加えて、2019年10月は列島を襲った台風の影響により物流が一時的にストップしたことも、輸入を抑制する一因となったようです。このような外部要因による黒字化は、手放しで喜べる景気回復とは少し性質が異なると言えるでしょう。
サービス収支と観光への影響、そして投資収益の今
海外への支払い状況を示すサービス収支も、赤字幅が縮小して改善傾向にあります。これは、企業のマーケティング委託費用といった「その他業務」への支払いが減ったことが影響しました。一方、気になるのは観光分野です。韓国からの訪日客が大幅に減少したことで、旅行収支の黒字は前年から9%減の2035億円にとどまりました。SNSでも、インバウンド需要の冷え込みを懸念する声が目立っており、今後の観光戦略が問われています。
また、海外への投資で得た利益を示す「第1次所得収支」については、1兆7775億円の黒字となったものの、前年からは14%の減少を記録しました。これは、日本国内にある外国の親会社への配当金が増加したためです。投資による稼ぎは依然として高い水準を維持していますが、グローバルな資本の動きが日本の収支にダイレクトに反映されている様子が伺えます。
編集者としての視点では、今回の「38%増」という数字の裏にある、輸入の減少が黒字を作る「縮小均衡」のような構図が気にかかります。エネルギー安は家計や企業にとって恩恵ですが、輸出の停滞は製造業の苦境を反映しています。今後は単なる黒字額の維持だけでなく、インバウンドの多角化や、高付加価値なサービスの輸出をいかに伸ばしていくかが、持続可能な成長のカギを握るのではないでしょうか。
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