2019年12月10日、欧州の金融界に激震が走りました。ドイツのショルツ副首相兼財務相が、これまで消極的だった「欧州共通の預金保険制度」の創設を突如として提唱したからです。この発言は、欧州政治の地殻変動を象徴する出来事として大きな注目を集めています。
「預金保険制度」とは、万が一銀行が破綻した際に、預金者の資産を一定額まで保護する仕組みを指します。2014年からは欧州中央銀行(ECB)が銀行監視を一元化していますが、破綻処理の財布となる保険制度は各国バラバラのままでした。ドイツの突然の歩み寄りに、周辺国は驚きを隠せません。
ポスト・メルケルを巡る野心と政治的思惑
なぜドイツは方針を転換したのでしょうか。その背景には、2021年の退任を控えたメルケル首相の後継争いがあります。ショルツ氏率いる社会民主党(SPD)は支持率の低迷にあえいでおり、次期総選挙を見据えて華々しい「外交的実績」を打ち出す必要に迫られているのです。
かつてショルツ氏は、国内巨大銀行の合併構想に失敗した過去があります。その雪辱を果たすべく、2020年後半にドイツがEU議長国となる好機を捉え、「欧州統合の推進者」というクリーンなイメージを国内外に印象づけようとしているのでしょう。SNSでは「野心的な一手」との声も上がっています。
仕掛けられた「罠」と国債規制の衝撃
しかし、この甘い誘いには厳しい条件が隠されています。ショルツ氏は「国債はリスクフリー(無リスク)ではない」と断言し、預金保険の一元化と引き換えに、銀行が保有する国債の量に制限を設ける新たな規制を検討しているのです。これは金融界にとって極めて衝撃的な提案といえます。
過去の債務危機では、政府の信用不安が銀行の経営悪化を招き、さらなる混乱を生む負の連鎖が起きました。この「共振」を断ち切るために、国債を多く持つ銀行に自己資本の積み増しを求めるという狙いです。イタリアやスペインなどの南欧諸国からは、当然ながら猛烈な反発が予想されます。
日本への飛び火?世界を巻き込む規制の波
私は、この動きを単なる欧州内の政争として片付けるべきではないと考えます。ドイツは以前からこの規制を国際標準にしようと画策しており、一度は日米の反対で頓挫した経緯があります。もしこれが世界的なルールとなれば、国債を大量に保有する日本国内の銀行への打撃は計り知れません。
2019年12月現在、ドイツ国内の政治闘争が引き金となり、世界の金融秩序が書き換えられようとしています。一見すると前向きな「統合」の陰で、自国の利益と選挙戦を有利に進めようとする思惑が透けて見えます。私たちは、この欧州のうねりが日本に波及するリスクを注視し続けるべきでしょう。
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