逆境に立たされたとき、私たちはどのようにして状況を打破すれば良いのでしょうか。その答えを探るべく、名著『失敗の本質』の系譜を受け継ぐ待望の新作、野中郁次郎氏や戸部良一氏らによる共著『知略の本質、劣勢を覆す思考のプロセス』が2020年01月04日に書評で紹介され、大きな注目を集めています。SNS上でも「ビジネスの逆転劇にも通じる」「組織論として非常に深い」といった感銘を受ける声が相次いでおり、激動の時代を生き抜く現代人にとって、まさに必読の一冊と言えるでしょう。
本書では、第2次世界大戦における独ソ戦やバトル・オブ・ブリテン、さらにはベトナム戦争やイラク戦争など、4つの国家が繰り広げた8つの歴史的な戦いを徹底的に分析しています。特筆すべきは、当初は圧倒的な劣勢に追い込まれながらも、最終的に見事な逆転勝利を収めた事例を中心に扱っている点です。スターリンやチャーチル、ホー・チ・ミンといった指導者たちが、絶望的な状況からどのようにして勝利への切符を掴み取ったのか、その核心にある戦略の役割が鮮明に描き出されています。
二項動態と戦局眼がもたらす逆転のプロセス
彼らが共通して持っていたもの、それこそが本書のテーマである「知略」です。これは攻撃と防御、正攻法と奇襲といった、一見すると矛盾する2つの選択肢を固定化させず、状況に合わせて柔軟に使い分ける「二項動態(にこうどうたい)」の思考を指します。つまり、白か黒かという二者択一ではなく、状況のコンテキスト(文脈や背景)の変化に応じて、動的に戦略を変化させる柔軟性が勝利には不可欠なのです。こうした一見対立する要素を対話や実践を通じて高めていくプロセスは、まさに哲学でいう「弁証法」そのものと言えます。
では、刻一刻と変わる戦況のなかで、具体的にどの戦略を選ぶべきかをどうやって判断するのでしょうか。ここで重要になるのが、プロイセンの軍事思想家クラウゼヴィッツが提唱した「戦局眼(せんきょくがん)」という能力です。これは「いま、ここ」で起きている本質を一瞬で見抜く洞察力のことであり、本書ではこの戦局眼を個人の才能にとどめず、組織全体としていかに養成していくかという組織論の観点からも、非常に深い分析が試みられています。
私は、この「戦略の価値は文脈に依存する」という本書の指摘こそ、現代のビジネスパーソンに最も響く至言だと確信しています。市場のトレンドや競合の動きが目まぐるしく変わる現代において、過去の成功法則に縛られた固定的な戦略はむしろリスクになり得ます。逆境をチャンスに変えるためには、現場の文脈を正しく読み解き、組織全体で柔軟に知略を発揮する。そんな本質的な思考プロセスを学べる本書は、現代を生き抜く強力な武器になるはずです。
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