朝ドラ『エール』で大注目!天才作曲家・古関裕而の知られざる生涯と、名曲の裏に隠された「戦後の十字架」とは?

J-POPが全盛の現代にあっても、昭和の流行歌が持つ独特の哀愁や力強さは、私たちの心を捉えて離しません。特にドラマ『君の名は』の主題歌や、1964年10月10日の東京五輪で流れた『オリンピック・マーチ』は、今なお色褪せない格調高さを誇っています。そんな数々の名曲を生み出した大作曲家、古関裕而氏の生涯に迫る伝記が、大きな話題を呼んでいるのをご存じでしょうか。著者は、若き日から昭和歌謡を愛し続けてきた日本近代史の研究者である、刑部芳則氏です。

2020年春からスタートするNHK連続テレビ小説『エール』では、古関夫妻をモデルにした物語が描かれることになりました。この絶好の機会に、刑部氏は満を持して出版社へ執筆を提案し、一冊の濃密な伝記を完成させたのです。SNS上では「朝ドラの予習にぴったり」「断片的な情報ではなく、一人の人間としての生き様を知りたい」といった期待の声が続々と寄せられています。ブームの表面をなぞるだけにとどまらず、彼の内面に深く切り込もうとする試みに、多くの人々が関心を寄せています。

刑部氏は、古関氏が残したプライベートな手紙である私信を丁寧に読み解き、生前の雑誌インタビューなど貴重な資料を次々と発掘しました。それらの記録をもとに、名曲の誕生秘話や実直な人柄を物語るエピソードを鮮やかに描き出しています。さらに本書では、同時代を駆け抜けたもう一人の天才作曲家、古賀政男氏との対比という興味深いアプローチが取り入れられました。ヒット曲を連発する使命を背負った二人の歩みは、非常に対照的でドラマチックです。

ここで言う「専属」とは、特定のレコード会社とだけ契約を結んで楽曲を提供する仕組みのことで、当時の音楽界では一般的なスタイルでした。流行歌の分野で瞬く間に才能を開花させた古賀氏に対し、古関氏はしばらくの間、思うような成果を出せずに苦悩します。しかし、時代が戦争へと突き進む中で二人の立場は一変しました。戦意高揚、つまり国民の戦う意欲を高めるための勇ましい楽曲が求められるようになると、哀愁漂う古賀氏の旋律は、時局にそぐわないとみなされてしまいます。

一方で、クラシック音楽の本格的な素養を持っていた古関氏のメロディーは、雄大で気品に満ちていました。さらに、戦地へ赴く兵士への慈しみや悲哀を含んだ独特の響きがあり、1937年発売の『露営の歌』などは、瞬く間に民衆の心を掴むことになります。これによって彼は時代の寵児となりましたが、その華々しい功績の裏側で、胸中は激しく葛藤していたようです。自分の作った音楽が若者たちを戦場へと駆り立ててしまったという、深い悔恨の念を抱くようになります。

古関氏は、この重い「十字架」をその後の生涯を通じて背負い続けることになりました。歴史研究者としての使命感から、刑部氏は単に彼の輝かしい栄光を称えるだけでなく、その壮絶な苦悩をも包み隠さず書ききっています。私自身、この客観的かつ温かい視点に深く共感いたしました。光が強ければ強いほど、その影もまた深くなるのが人間の歴史であり、その陰影を描くことこそが、人物の真の魅力を浮き彫りにするのだと確信しています。

資料を通じて見えてきた古関氏の素顔は、大作曲家という地位にありながらも決して傲慢にならず、常に謙虚さを失わない素晴らしいものだったそうです。傲慢さとは無縁のその清らかなお人柄があったからこそ、時代を超えて万人の胸を打つ、気高い旋律が生まれたのでしょう。2020年1月4日現在、朝ドラの放送を間近に控え、この本を通じて古関メロディーの真実の美しさに触れる人が増えることを、切に願ってやみません。

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