伊勢神宮で迎える幻想的な年越し!安藤桃子監督が語る「炎」の魔力と現代人が忘れたライフハックとは?

映画監督の安藤桃子さんが、伊勢神宮での特別な年越し体験を明かしてくれました。お父様である奥田瑛二さんが伊勢志摩サミットを記念した特別番組『斎王(さいおう)』に携わった縁で、数年前からご両親は伊勢神宮で新年を迎えているそうです。斎王とは、かつて天皇に代わって伊勢神宮に仕えた未婚の皇女を指す専門用語ですが、そんな歴史の深い繋がりから安藤さん自身もこの貴重な深夜の参拝に便乗することになりました。

2020年01月22日に語られたこのエピソードは、想像を絶する過酷な寒さから始まります。地元出身の脚本家をリーダーに、夜22時に集合して外宮(げくう)と内宮(ないくう)の両方を巡る強行軍でした。外宮とは衣食住の神様、内宮とは皇室の祖先を祀る最高峰のお社です。あまりの極寒に、安藤さんはコンビニへ駆け込み手袋とニット帽を調達したほどでした。SNSでも「冬の伊勢の冷え込みは尋常じゃない」「防寒対策は必須」と共感の声が相次いでいます。

しかし、有名な大鳥居をくぐり、参拝客の波に身をゆだねると不思議な現象が起こりました。あんなに凍えていた体が、寒さを全く感じなくなったのです。新年来臨の高揚感と清々しさに包まれた人の群れは、まるで背後にそれぞれのご先祖様を連れて歩いているかのような神秘的な光景でした。何百年も前から人々が特別視してきたお伊勢参りの歴史のなかに、自分もいま存在しているという事実に、ただひたすら有り難さを覚えたそうです。

参拝の中で最も安藤さんの心に焼き付いたのが、境内を照らす大かがり火の存在でした。現代の暮らしにおいて、私たちは「火」を見る機会が激減しています。防災や利便性のためにIHクッキングヒーター(電磁調理器)を導入する家庭が増え、タバコも電子化されたことで、街から赤い灯火が消えつつあるのが現状です。文明の利器は安全をもたらしてくれましたが、同時に人間が本来持っていた本能的な感覚を鈍らせているのかもしれません。

安藤さんが暮らす高知県では、野焼きや薪風呂、日常的な焚き火など、今でも火が生活のすぐそばにあります。火の番をすることは、命の危険と隣り合わせで自然と真剣に向き合う経験そのものです。娘さんが1歳だった頃、石油ストーブの前で転倒しそうになった際、近所のおじいちゃんが娘さんの手をストーブの熱いと感じるギリギリの距離まで近づけ、「火を感じてみろ」と教えたエピソードは、現代の教育において非常に示唆に富んでいます。

危険を本能で察知し、体験としてインプットした娘さんは、それ以来あらゆることに注意深く育ったといいます。自然界の大きな力には脅威と恵みが同居しており、単に危険を回避するだけでなく、この「寸止め体験」をすることこそが真の防災に繋がるのではないでしょうか。すべてを先回りして排除する現代の過保護な環境に対し、あえてリスクを肌で知ることの重要性を説く安藤さんの主張には、ハッとさせられる深い知恵が詰まっています。

漆黒の夜空に満天の星が輝き、山々が静かに見守るなか、巨大な龍神のように揺らめき、はぜる大かがり火。その周りに老若男女が集まり、輪になっている光景は忘れられないものとなりました。炎には、見知らぬ者同士であっても言葉の壁を超えて心を通わせる不思議な魔法があります。優しくも力強い炎の光は、私たちの魂の奥底までを照らし出し、現代人が忘れかけている生命の根源的なエネルギーを思い出させてくれるでしょう。

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