世界的な景気減速の波が押し寄せる中、日本の化学業界で圧倒的な存在感を放つ企業があります。それこそが、2020年1月28日に2019年4月から12月期の連結決算を発表した信越化学工業です。驚くべきことに、同期の純利益は前年同期比で2%増となる2468億円を記録しました。この実績は、同期間としては3期連続で過去最高を更新する快挙となります。中国市場などの冷え込みによってライバル企業が苦戦を強いられる中、同社の底堅さは一段と際立っている状況です。
インターネット上やSNSでも、この驚異的な決算内容に対して驚きと称賛の声が相次いでいます。「不況にこれほど強い化学企業があるなんて信じられない」「半導体だけでなく、ポートフォリオの組み方が神がかっている」といった、投資家やビジネスパーソンからの熱い書き込みが目立ちました。多くの人々が同社の圧倒的な防衛力と、不況を跳ね返すビジネスモデルに強い関心を寄せています。
コンタクトレンズから自動車まで支える魔法の素材「シリコーン」
同社といえば世界シェア首位を誇る半導体ウエハーが有名ですが、それだけに依存しない強固な収益基盤こそが最大の武器なのです。その中核を担うのが、私たちの生活にも深く息づいている「シリコーン樹脂」という優れた機能を持つ素材になります。ここで言うシリコーンとは、天然のケイ石を原料として作られる人工の有機ケイ素化合物のことです。耐熱性や撥水性、柔軟性など多くの優れた特性を併せ持ち、液体からゴム状のものまで姿を自由に変えられます。
このシリコーンは、潤いが持続するコンタクトレンズや、肌馴染みを良くするファンデーションといった化粧品、さらには自動車の耐熱部材まで幅広く採用されているのです。同社が手がける製品数は、実に5000種類を超えています。これほど多様な分野に深く食い込んでいるからこそ、どこかの業界が不振に陥っても、別の分野でカバーできる安定感が生み出されているのでしょう。
高利益率を叩き出す「多品種少量生産」のビジネスモデル
信越化学工業の強さを語る上で外せないのが、「多品種少量生産」という独自の戦略です。一般的な化学メーカーは大量生産でコストを抑える手法を好みますが、同社は顧客の要望に合わせて細かく仕様を変えた高付加価値品を生産しています。こうした特注品は全体の売上高の約7割を占めると見られており、市場で価格競争に巻き込まれにくいのが大きなメリットです。
この戦略が功を奏し、シリコーン事業の利益率は異例とも言える25%に達しています。通常の化学系事業で20%を超えることは極めて稀であり、驚異的な効率性と言わざるを得ません。独自の高い技術力があるからこそ、顧客と二人三脚で製品を開発し、少量であっても確実に利益を確保できる構造が確立されているのです。
隙のない5大事業がもたらす最強の抵抗力
さらに、同社の盤石さはシリコーンだけにとどまりません。モーターに不可欠なレアアース磁石や、半導体の回路を描く際に必須となるフォトレジスト(感光液)などを扱う電子・機能材料事業も非常に好調です。これに加えて、飲み薬の錠剤に使われる医薬品向け原材料などの機能性化学品も5期連続で増益を達成しました。世界トップシェアを誇る塩化ビニール樹脂事業も、他社が大きく利益を減らす中で、わずかな減益にとどめながらほぼフル生産を維持しています。
株式市場からは「不況時の抵抗力が極めて強い」と絶賛されており、それが株価にも如実に表れている状況です。2019年3月末と比較すると、大手化学メーカーの旭化成が3%安、三菱ケミカルホールディングスが2%高と伸び悩む中、信越化学工業はなんと32%もの大幅な上昇を記録しました。市場がいかに同社の安定性と成長性を高く評価しているかが証明された形です。
編集部がみる信越化学工業の未来
筆者は、この信越化学工業の姿こそが日本の製造業が目指すべき理想郷であると考えます。単なる価格競争に陥るコモディティ化を避け、技術力に裏打ちされた高付加価値品で顧客のハートを掴む姿勢は、見事というほかありません。半導体ウエハーの市況についても、今後は大きな落ち込みにはならないとの見通しが示されています。今後、半導体需要が本格的に回復局面を迎えれば、同社の業績はさらに爆発的な成長を遂げるに違いないでしょう。
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