世界中を震撼させている新型肺炎の拡大を受け、中国の習近平指導部は経済の大打撃を食い止めるため、なりふり構わぬ猛烈なバックアップを開始しました。2020年2月8日現在、景気の失速を防ごうと金融と財政の両面から異例の巨額資金が投入されており、その動向に世界中から熱い視線が注がれています。
ネット上やSNSでも「中国の経済対策の規模感が凄まじい」「ここまでの大盤振る舞いは予想外だ」といった驚きの声が相次いでおり、政府の本気度に注目が集まっている状況です。
中国の中央銀行である中国人民銀行は、市場の混乱を抑えるために素早い一手を打ち出しました。中国の株式市場が再開した2020年2月3日からのわずか2日間で、市場に供給された資金はなんと計1兆7000億元、日本円にして約27兆円という驚天動地のスケールに達しています。
この超巨額の資金注入によって株価の暴落は食い止められ、外国為替市場の人民元相場も安定を保つことに成功しました。
さらに、マスクの製造など国から指定された重要企業に対しては、3000億元の特別な低金利融資枠が準備されています。ここで注目したいのが、驚くほどの好条件です。通常の融資ではあり得ない、最優遇貸出金利である「LPR」を大幅に下回る水準が設定されました。
このLPRとは、銀行が最も信用力の高い優良企業に貸し出す際の基準金利のことで、実質的な政策金利としての役割を持っています。
今回はそのLPRより1%以上も低い3.15%以下に設定され、さらに政府からの利子補給が加わることで、企業の実際の負担金利は1.6%以下という驚きの破格ぶりとなりました。
財政面での大盤振る舞いも凄まじく、すでに667億元の資金が医療現場の支援や患者の治療費、医師らのバックアップのためにスタンバイしています。
それだけでなく、防疫活動に貢献する企業や個人に対しては、日本の消費税に相当する「増値税」や法人税、個人所得税など、あらゆる税制上の優遇措置が用意されました。
医療用品増産のために設備投資を行った企業には、設備購入費を早期に費用化して税金を減らす「加速度償却」が認められ、赤字を翌年以降に持ち越せる期間も5年から8年へと延長されています。
実は新型肺炎が深刻化する前の2019年12月には、政府系シンクタンクのトップが「2020年にこれ以上の大規模な減税を行うことはない」と明言していました。2019年に実施した2兆元規模の減税により、地方政府が深刻な財政難に陥っていたためです。
しかし、今回の予期せぬウイルス拡大によって、中国政府は事態を収拾するための緊急出動を余儀なくされたと言えるでしょう。
緊急対応の裏でささやかれる「構造改革」棚上げへの懸念
ただ、編集部として懸念せざるを得ないのは、目先の危機を救うあまり、長年取り組んできた「構造改革」が後回しにされる兆候が見え隠れしている点です。
中国当局はこれまで、銀行の帳簿に載らない不透明な金融取引である「影の銀行(シャドーバンキング)」の温床となってきた高利回りの金融商品、いわゆる「理財商品」への規制を強化してきました。
この理財商品の規制に向けては、2020年末までの猶予期間が設けられていましたが、金融当局の幹部からは早くもこの期限を延長する可能性が示唆されています。地元メディアの報道によると、猶予を2021年末まで丸1年先送りする検討に入った模様です。
もし本当に先送りが決定すれば、不透明な資金の流れが再び温存されることになり、将来的な金融リスクの火種を残すことになりかねません。
目前の国難を乗り切るための緊急融資や財政出動は間違いなく不可欠であり、習近平指導部の決断の早さは評価されるべきです。
しかし、構造改革という「痛みを伴う治療」から目を背け続ければ、新型肺炎が収束した後に、より大きな経済の歪みが中国を襲うリスクがあるでしょう。救済と改革のバランスをどう取るのか、指導部の手腕が今まさに試されています。
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