多くの観光客が訪れる魅力的な観光地、栃木県ですが、実は「日帰り県」という課題に直面しているのをご存知でしょうか。観光客が宿泊せずに日帰りで帰ってしまう傾向が強いため、その経済効果を最大限に引き出せていない状況があるのです。この現状を打破し、観光消費の拡大を目指して、栃木県は新たな観光戦略に注力しているところでしょう。
栃木県が宿泊客の増加に向けた取り組みを本格化させたのは、2018年4月から6月にかけて実施されたJRグループの大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン(DC)」が大きなきっかけとなっています。この一大企画において、県は年間で入り込み客数2,500万人、宿泊客数220万人という高い目標を掲げました。キャンペーンの結果、入り込み客数は2,505万人と目標を達成しましたが、残念ながら宿泊客数は203万人に留まり、「日帰り県」という従来の課題が改めて鮮明になった形です。
しかし、宿泊客を増やすことによる地域経済への波及効果は非常に大きいものがあります。2018年度の栃木県観光動態調査によりますと、栃木を訪れた日帰り客の1人当たりの平均消費支出は7,262円でした。それに対して、宿泊客の平均消費支出は32,047円と、実に4倍以上へと大きく跳ね上がることが分かっています。宿泊費そのものに加え、地元の飲食店での飲食費や、家族・友人への土産代など、様々な項目で消費が増える傾向にあるため、宿泊客誘致は地域経済活性化の要と言えるでしょう。
このデータからは、「観光は泊まってこそ」という私の意見を裏付けるものがあると言えます。ただ景色を見て帰るだけでなく、その土地の夜の顔や、朝の静けさを体験することで、観光客の満足度が向上するだけでなく、地域への愛着も深まるのではないでしょうか。そのためにも、日帰り客を宿泊へ誘導するための魅力的な夜間コンテンツや、宿泊者限定の体験プログラムの充実が不可欠であると考えられます。
地元経済界も、この状況を看過していません。栃木県経済同友会は2019年5月15日、観光や教育などに関する3種類の提言書を福田富一知事に提出しました。提言書の中では、観光立県としての地位をさらに高めるため、観光施策を一元的に担う「観光局(仮称)」といった専門組織の設置が具体的に提案されています。これは、県全体として観光を重要な成長戦略と捉え、組織的な体制強化を図るべきという、強いメッセージだと受け止められます。
栃木県は今、「日帰り県」のイメージから脱却し、「泊まる栃木」へと変貌を遂げようとしています。県民の間でも「日帰りじゃもったいない」「栃木には泊まる魅力がたくさんある」といったSNSでの反響も徐々に広がりつつあり、観光客の意識変化への期待が高まっています。まずは、2019年4月から6月の期間で改めて目標に掲げられた宿泊客220万人が達成できるかどうか、その結果に大きな注目が集まっていると言えるでしょう。
コメント