2019年に入り、日本と韓国の間にはかつてないほどの冷え切った空気が漂っています。一部では「戦後最悪の関係」とまで囁かれるほど、両国の政治的な緊張は高まりを見せています。特に日本政府による対韓輸出規制、いわゆる「半導体素材などの輸出管理の厳格化」が発表されて以降、ソウルの街中では目に見える変化が忍び寄っているようです。
現地で生活する記者が先日、タクシーを利用した際のエピソードは象徴的かもしれません。運転手から「中国人か日本人か」と問われ、「日本人です」と伝えた瞬間、それまでの和やかな空気が一変し、車内は重苦しい沈黙に包まれました。以前であれば、日本から来たと分かると身を乗り出して話しかけてくる陽気な運転手が多かっただけに、現在の社会情勢が市民の心に影を落としていることが伺えます。
しかし、こうした国家間の軋轢(あつれき)がそのまま個人間の関係を断絶させているわけではありません。韓国の人々は本来、非常に情に厚く、困っている人を見過ごせない「情(ジョン)」の文化を大切にする国民性を持っています。たとえニュースが連日厳しい状況を報じていても、街角のカフェやレストランでは、変わらぬ優しさが溢れているのもまた事実なのです。
実際に、2019年07月13日の週末には、ソウル支局近くのカフェで心温まる出来事がありました。いつものように飲み物を注文したところ、店員さんが「今日もお仕事ですか?」と満面の笑みで声をかけてくれ、サービスでクッキーを添えてくれたのです。こうした小さな気遣いは、政治的な緊張感にさらされている日本人にとって、何よりも救いになる瞬間だと言えるでしょう。
さらに、最近通い始めた中華料理店でも、顔を覚えた店主から「いつもありがとうございます」とマンゴープリンを差し入れられる一幕がありました。タクシーでの一件で少しばかり沈んでいた記者の心には、こうした現地の人々の変わらぬ親切が、いつも以上に深く染み入りました。こうした草の根の繋がりこそが、両国の絆を支える最後の砦なのかもしれません。
SNS上でも、こうした現地の声に対して「政治と民間は切り離して考えるべきだ」「今こそ文化交流を止めてはいけない」といった前向きな意見が数多く投稿されています。旅行者や現地在住者のリアルな体験談は、メディアが報じる「対立」という側面だけではない、多層的な日韓関係の真実を私たちに教えてくれているのではないでしょうか。
2019年07月18日、私用でソウルから大阪へと向かうLCC(格安航空会社)に搭乗した際、記者は驚くべき光景を目にしました。機内の座席は約8割が埋まっており、その多くは観光を楽しむ韓国の若者たちだったのです。パスポートを持って国境を越える彼らの足取りは軽く、そこにはニュースで流れる険悪なムードは微塵も感じられませんでした。
私は編集者として、政治や経済の動向がどれほど厳しくなろうとも、人と人との直接的な交流までが色あせてしまうべきではないと考えます。政府同士の対話が停滞している時期だからこそ、美味しいものを食べ、景色を楽しみ、笑顔を交わすといった日常の交流が、将来の和解に向けた大切な種火になるはずです。一刻も早く、誰もが気兼ねなく隣国を楽しめる日が来ることを願ってやみません。
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