2019年6月6日、出版業界に大きな波紋を呼ぶニュースが飛び込んできました。朝日新聞出版が昨年8月に出版した絵本『いじめているきみへ』について、インターネット上に公開されていた写真を著作権者の許可なく無断で利用してイラストの一部が描かれていたことが判明し、急遽、出荷停止の措置を取ったと発表されました。これは、デジタル時代における著作権のあり方、特にクリエイティブな作品の制作過程における倫理観について、読者やSNS上で活発な議論を巻き起こしています。
朝日新聞出版の発表によると、今回の問題は、絵本のイラストを担当された「みきぐち」さんが、本作品とは別のイラストレーションに関して「写真を無断利用して描いているのではないか」という指摘を2019年4月下旬にインターネット上で受けたことがきっかけでした。この報告を受け、同社が調査を進めたところ、問題の絵本『いじめているきみへ』のイラストの中にも、確かにインターネット上にあった未承諾の写真が利用されていることが明らかになったのです。この状況は、出版社のチェック体制や、制作に携わるクリエイターの著作権に対する意識について、あらためて考えさせられる出来事だと言えるでしょう。
今回の事態を受け、イラストレーターのみきぐちさんは、朝日新聞出版のウェブサイトを通じて、「イラストの一部は、ネット上の画像を利用して描きました。心よりおわび申し上げます」と謝罪コメントを表明しています。この「ネット上の画像を利用した」という表現は、具体的には、著作権者が持つ複製権や翻案権といった権利を侵害する可能性を示唆しています。著作権とは、創作的な表現をした人(著作者)に自動的に発生する、その作品を独占的に利用できる権利のことであり、インターネット上に公開されている画像であっても、許可なく利用することは原則として許されていません。
本件に関するSNSでの反響は非常に大きく、「絵本という教育的な媒体で著作権侵害が起こったことにショックを受けている」「プロのクリエイターとしての意識を疑う」「出版社側の確認不足も問題ではないか」といった厳しい意見が多く見受けられます。一方で、「意図的な悪用ではないのかもしれない」「イラストレーターも人間だから間違いはある」といった、一定の理解を示す声も散見されました。いずれにせよ、この問題は多くの人々にとって、デジタルコンテンツ時代の著作権侵害の身近な事例として受け止められたようです。
私自身の考えとしては、今回の事態は、クリエイターと出版社双方の著作権に対するリテラシーの強化が急務であることを示しています。特に、インターネット上には膨大な画像が存在し、容易にアクセスできる現代だからこそ、制作物に利用する素材が正当な手続きを経ているか、あるいは利用許諾を得る必要がない著作権フリーな素材であるかを、徹底して確認するフローが不可欠です。本件は、意図的でなかったとしても、結果として著作権者の権利を侵害し、多くの読者を裏切る形になってしまいました。この教訓を活かし、クリエイティブ業界全体が、より高い倫理観をもって作品制作に臨むべきだと強く提言いたします。
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