化学品専門商社として知られる長瀬産業株式会社が、2019年6月6日、健康食品素材で巨大なシェアを持つアメリカのプリノバ・グループを約650億円で買収すると発表いたしました。この大型買収は、2020年度を最終年度とする中期経営計画の目標達成に向け、長瀬産業がグローバルな成長領域である「ニュートリション」事業に本格的に舵を切るという、強い意志の表れであると捉えることができます。
プリノバ・グループは、アメリカのイリノイ州を拠点とし、ビタミンやアミノ酸といった健康食品向けの重要な素材を欧米市場で幅広く展開する大手企業です。そのビジネス規模は、2018年12月期において約7億8,000万ドル(約844億円)という目覚ましい売上高を誇ります。この買収によって、長瀬産業はプリノバが持つ強固な欧米の販売チャネルを即座に手に入れ、欧米事業の飛躍的な拡大を目指します。また、逆に長瀬産業が持つアジア圏での強固な営業基盤を利用し、プリノバのアジア展開を強力にバックアップする体制を構築する計画です。
「ニュートリション」とは、スポーツ食品や健康食品に使われる食品添加物や機能性素材の総称で、現代社会の健康志向の高まりとともに急速に拡大している市場です。この分野は世界で1兆円規模の市場があり、年率約10%という驚異的なスピードで成長を続けているのです。特に、経済成長に伴い中間所得者層が増加しているアジア地域では、健康食品への関心が高まり、今後さらなる需要増加が見込まれています。長瀬産業は、この成長ドライバーを逃すまいと、自社の持つアジアでの営業力を最大限に活用し、プリノバ社の持つ高品質な2,000品目にも及ぶ食品素材群を販売していく考えです。
この買収が実現すれば、長瀬産業はプリノバの現経営陣から株式の約93%を取得し、2019年7月には買収手続きが完了する見込みです。買収後、長瀬産業からは数名の役員がプリノバ社へ派遣され、経営の統合とシナジー(相乗効果)の最大化を推進していく予定でしょう。この大型投資は、2012年に食品素材の株式会社林原(岡山市)を約700億円で完全子会社化したことに次ぐ規模であり、長瀬産業の事業構造変革に対する本気度がうかがえます。本件を受けて、同社は2020年度を最終年度とする中期経営計画の上方修正についても検討を進める意向を表明しており、市場の期待は高まるばかりです。
SNS上では、「化学品専門商社が健康食品に本格参入とは驚き」「海外の優良企業を約650億円で買収するとは、長瀬産業の資金力と決断力に脱帽」「日本の商社がグローバルなニュートリション市場の成長を取り込むのは賢明な戦略だ」といったポジティブな反響が多く見受けられます。健康志向の高まりは世界的なトレンドであり、特にプロテインやサプリメントといった分野は今後も伸びが期待できます。プリノバ社が展開する卸売事業に加え、プロテインなどのスポーツ食品のOEM(Original Equipment Manufacturing:相手先ブランドによる生産)といった付加価値の高いビジネスモデルを持つことも、長瀬産業にとって大きな強みとなるでしょう。
私見ではございますが、この買収は、長瀬産業が長年培ってきた化学品や素材に関する知見と、プリノバ社が持つ「ニュートリション」分野の専門性が融合することで、計り知れないシナジーを生み出すと確信しています。今後、長瀬産業がアジアと欧米を股にかけたグローバルな健康ビジネスの雄として、どのようなイノベーションを起こしてくれるのか、大いに期待したいところです。この大胆な一手は、同社の今後の成長戦略を占う上で、極めて重要なターニングポイントになるでしょう。
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