2019年07月26日、経営再建の荒波を乗り越え、新たなスタートを切る一人のリーダーが注目を集めています。その人物こそ、田淵電機の社長に就任した小野有理氏です。ダイヤモンド電機の社長も務める彼は、若手教育のコンサルティングからその手腕を見込まれ、創業家より経営を託されたという異色の経歴を持っています。わずか1年9カ月で前職の再建を成し遂げた圧倒的な実行力には、業界内外から驚きの声が上がっています。
今回の経営統合の舞台裏には、不思議な縁がありました。経営難に陥った田淵電機は、裁判を通さず債権者と話し合う「事業再生ADR」という制度を利用して立て直しを図りました。その際、手を差し伸べたダイヤモンド電機とはもともと取引がほぼなかったものの、驚くべきことに本社同士が「新大阪駅」の周辺にあるという共通点があったのです。この近接性が「新大阪連合」という力強い連帯感を生むきっかけとなったのでしょう。
SNS上では、小野氏の「買収ではなく仲間化」という言葉に対して、「冷徹なM&Aのイメージが変わった」「働く人を大切にする姿勢に共感する」といったポジティブな反応が数多く寄せられています。製造業に携わる人々にとって、工場がある街で暮らすことは人生そのものを意味することが少なくありません。小野氏は、単なる組織の統合ではなく、そこに住まう社員たちの生活や安心を守ることを最優先に考えているようです。
小野氏は、社員を「使用人」ではなく、共に汗をかく「仲間」として迎え入れています。特に高い技術力を持つエンジニアに対しては、彼らが自信を持って能力を発揮できるよう、3カ月のトライアル期間を設けるといった柔軟な採用手法を取り入れました。その結果、40人から50人もの優秀な人材が、彼の理念に共感して集まったといいます。人の心を動かすことが経営の本質であることを、彼は身をもって証明しています。
次世代技術V2H・V2Gが描く未来の暮らし
田淵電機が誇る武器は、太陽光発電に不可欠な「パワーコンディショナー」です。これは、太陽光パネルで作った直流の電気を、家庭で使える交流に変換する装置のことです。小野氏は、この技術にダイヤモンド電機の車載部品ノウハウを掛け合わせることで、大きな化学反応を狙っています。電気自動車(EV)を巨大な蓄電池として活用し、家や街全体に電力を供給する次世代インフラへの挑戦が始まろうとしています。
具体的には、「V2H(ビークル・トゥ・ホーム)」や「V2G(ビークル・トゥ・グリッド)」といった最先端領域へ注力する方針です。前者は車から家へ、後者は車から電力網へと電気を送り出す仕組みを指します。これらが普及すれば、災害時のバックアップ電源や電力需要の平準化に大きく貢献するでしょう。伝統あるブランド同士が手を取り合い、脱炭素社会の実現に向けて加速する姿は、まさに新時代の製造業の在り方を示していると感じます。
一方で、彼はグローバルな視点も忘れていません。先進国でEVシフトが進む中でも、アジアやアフリカなどの途上国では依然としてガソリン車の需要が根強く残っています。こうした市場を切り捨てるのではなく、ガソリン車向けの点火コイルにおいてCO2削減技術を磨き続けることで、現実的な環境貢献を目指す姿勢は非常に理にかなっています。理想を追い求めつつも、足元の需要に寄り添うバランス感覚こそが彼の強みではないでしょうか。
2019年の秋までには、大阪市塚本への社屋移転も予定されています。物理的な距離を縮めることで、経営陣と現場の垣根を取り払い、風通しの良い組織文化を醸成しようという狙いが見て取れます。学生時代からラグビーで培ってきた「ワンチーム」の精神が、ビジネスの現場でも遺憾なく発揮されています。9月に開幕するラグビーワールドカップを心待ちにする彼の情熱は、必ずや新組織の活性化へと繋がっていくはずです。
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