カナダを拠点に世界を股にかけて活躍する車いすユーザー、マセソン美季さんが、各国のバリアフリー事情について貴重な提言を行っています。仕事で多くの国を訪れる彼女は、常にスマートフォンのカメラで公共施設やホテルの設備を記録し続けているそうです。しかし、そのレンズが向けられるのは、単なる外観ではなく、生活に直結する「トイレの内部」や「浴室の構造」といった、当事者にとって最も切実な情報なのです。
現代はインターネットで瞬時に情報を得られる時代ですが、車いすユーザーが必要とする細かなディテールは、意外にもネット上には溢れていません。「バリアフリー」という言葉の定義は国によって異なり、実際に行ってみなければ分からないという不安が常に付きまといます。特にSNS上では、こうした情報の少なさに「外出を躊躇してしまう」といった共感の声や、詳細なレビューを求める切実な意見が数多く寄せられています。
マセソンさんが暮らすカナダでは、施設が「アクセシブル(誰もがアクセス可能であること)」と謳っていれば、その期待を裏切られることはまずありません。たとえ設備が不十分であっても、周囲の人々が自然に知恵を出し合い、物理的な壁を心の通ったサポートで乗り越える文化が根付いています。これは単に設備が整っていること以上に、社会全体が多様性を受け入れる土壌があることを示しているのではないでしょうか。
日本のバリアフリー法改正と、2020年に向けた「心の壁」の解消
一方で、現在の日本に目を向けると、まだ課題が山積みであると言わざるを得ません。車いすを理由に入店を拒否されたり、無理に入店しても周囲に気を遣って肩身の狭い思いをしたりする場面が、2019年8月8日現在でも散見されます。本来であれば「行きたい場所」を選ぶべきなのに、日本では「行ける場所」を事前に徹底調査しなければならないという現状は、早急に改善されるべきだと私は強く感じます。
こうした状況を打破するための一歩として、2019年9月1日からは「改正バリアフリー法」が施行されます。これにより、新たに建設や改築を行う大規模なホテルでは、全客室の1%以上をバリアフリールームにすることが義務付けられました。制度によって物理的な選択肢が増えることは喜ばしいですが、それと同時に、マセソンさんがカナダで経験したような「周囲の助け合い」というソフト面の成長も、日本には必要不可欠です。
「バリアフリー」とは、単に段差をなくすことだけではありません。それは、身体的な特性に関わらず、誰もが当たり前に社会の一員として歓迎される状態を指すのです。私は、この法改正がハード面を整えるだけでなく、日本人の意識をアップデートするきっかけになることを期待しています。いつか彼女のスマホが、事前調査のためではなく、純粋に「素敵な旅の思い出」としての日本の写真で埋め尽くされる日が来ることを願ってやみません。
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