アメリカのドナルド・トランプ大統領が、低所得の移民に対して永住権(グリーンカード)の発給を厳格に制限する方針を打ち出し、全米で大きな波紋が広がっています。2019年08月12日、トランプ氏は「米国人の利益を守るため、移民には経済的に自立してもらう必要がある」という声明を発表しました。この方針は、2020年に控えた大統領選挙で再選を果たすべく、支持基盤である保守層に向けて強硬な姿勢をアピールする狙いがあると考えられます。
今回導入される新規則は、2019年10月15日から実施される予定です。これは「パブリック・チャージ(公的扶助を受ける可能性が高い者)」という概念を大幅に拡大するものです。具体的には、生活保護やフードスタンプと呼ばれる食料配給券、さらにはメディケイドといった公的医療扶助を一定以上利用した、あるいは利用する可能性があると見なされた移民に対し、ビザの発給や更新、永住権の取得を厳しく制限する内容となっています。
人道的視点と法廷闘争の行方
この措置は中南米からの不法移民対策の延長線上にありますが、今回は合法的に滞在している人々が対象となる点が極めて異例です。SNS上では「自力で生活できない者を排除するのは当然だ」という賛成意見がある一方で、「貧しい者は来るなという差別的な政策だ」といった激しい反発が渦巻いています。特に、家族を頼って渡米した低所得層が、ビザ更新への悪影響を恐れて必要な医療や支援を諦めてしまう事態が強く懸念されています。
こうした事態を受け、移民支援団体である全国移民法センター(NILC)は、この規則が家族の絆を破壊するものだとして、法的な対抗措置を講じる意向を表明しました。さらに、2019年08月13日にはカリフォルニア州サンフランシスコ市などが、新規則の無効化や一時差し止めを求めて連邦地裁に提訴しました。自治体や支援団体による、トランプ政権の強権的な政策に対する司法の場での抵抗が本格化しています。
また、トランプ政権は米国内の規制強化に留まらず、移民を送り出す周辺国への圧力も強めています。メキシコに対しては不法移民の北上阻止を要求し、2019年07月にはグアテマラ政府との間で、難民申請者を同国内で待機させる合意を取り付けました。しかし、2019年08月11日の大統領選で当選したグアテマラのアレハンドロ・ジャマテイ次期大統領は、この合意に強い懸念を示しており、今後の二国間関係にも不透明感が漂っています。
編集者の視点:経済的合理性と「アメリカの理想」の衝突
私自身の見解としては、国家が自国民の利益を優先し、移民に自立を求める論理自体は一定の理解が得られる側面もあるでしょう。しかし、今回のように「過去の公的扶助の利用」を理由に合法的な滞在者の権利を制限する手法は、あまりに冷酷であり、多様な人々が作り上げてきたアメリカという国の根幹を揺るがしかねない危うさを感じます。経済力だけで人の価値を測るような選別が加速すれば、社会の分断はより深刻なものとなっていくでしょう。
この新規則が実際に10月から施行されるのか、あるいは法廷での争いによってブレーキがかかるのか、その動向は今後のアメリカ社会のあり方を占う重要な指標となります。大統領選に向けた政治的なパフォーマンスとしての側面が強いとはいえ、現場で暮らす移民たちの生活に直結する問題だけに、私たちはこの動向を注視し続ける必要があります。弱者を切り捨てることで得られる「安定」が、果たして真に豊かな社会と言えるのか、改めて問い直されているようです。
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