世界をリードする化学メーカーの雄、ドイツのBASF社が、日本のものづくりの心臓部とも言える横浜市に新たな風を吹き込みました。2019年08月23日、同社の日本法人は、顧客の製品開発をトータルでバックアップする「クリエーションセンター」を堂々オープンさせたのです。この施設は、単なる素材の展示場に留まらず、最先端のインスピレーションと技術が交差する創造の場となるでしょう。
これまで親しまれてきたデザイン拠点「デザインファブリーク」を大胆に刷新したこの新拠点は、訪れる人々に驚きを与える仕掛けが満載です。SNS上でも「素材メーカーがここまでデジタルを駆使するのか」と、その先進的な取り組みに驚きと期待の声が広がっています。企業の枠を超えた共創が求められる現代において、このようなオープンイノベーションの拠点は、技術者にとって夢のような空間に見えるに違いありません。
特筆すべきは、最新テクノロジーを駆使した直感的な体験設計です。展示されている樹脂製品には「NFCタグ」と呼ばれる近距離無線通信技術が活用されています。これはスマートフォンの非接触決済などにも使われる技術で、専用のタブレットをかざすだけで、素材の詳細なスペックや用途が瞬時に画面に浮かび上がる仕組みです。わざわざ分厚いカタログをめくる必要がないのは、非常にスマートな体験ですね。
さらにAR(拡張現実)技術を導入したガイドシステムも、クリエイティビティを大いに刺激してくれるはずです。QRコードをスキャンすると、目の前の素材が実際の最終製品としてどのように活用されているのかが、現実の風景に重ねて表示されます。平面的な情報だけでは想像しにくい「素材の可能性」が可視化されることで、開発担当者のインスピレーションは一気に加速するのではないでしょうか。
試作支援の強化で加速する自動車業界の軽量化ニーズ
今回の刷新における最大の目玉は、併設された研究所との連携を深めた「試作支援」のパワーアップにあります。2019年10月には、従来よりも大型の中型プラスチック成型機が導入される予定です。これにより、これまでの小型機では難しかったA4からA2サイズの試験片が製作可能になります。これは自動車の部材などをより実戦に近い形でテストできることを意味しており、業界からの期待もひとしおです。
自動車メーカーにとって、車体の軽量化は燃費向上や電気自動車(EV)開発において避けて通れない至上命題となっています。樹脂素材への代替を進める中で、デザインの段階から試作、そして量産化までをワンストップで支援してくれるBASFの存在は、非常に心強いパートナーとなるでしょう。単に素材を売るだけでなく、顧客の「形にしたい」という想いに寄り添う姿勢は、これからのBtoBビジネスの理想形です。
BASFの戦略は日本に留まらず、世界規模でダイナミックに展開されています。2019年05月にはインドのムンバイで初のセンターが立ち上がり、この8月には横浜に続いて中国の上海にも開設される予定です。各国のニーズに特化した拠点が連携することで、インドの二輪車、中国の家電、そして日本の高度な自動車技術といった、地域ごとの強みがグローバルな知見として統合されていきます。
1888年の進出以来、130年以上の歴史を日本で刻んできたBASFが、今このタイミングで横浜に投資を行う意味は小さくありません。日本企業が国内で設計を行い、海外で製造するというグローバルな流れの中で、日本が「マザー工場」ならぬ「マザー・デザイン拠点」としての役割を担い続けるための重要な布石です。このセンターから、世界を変える画期的な製品が誕生する日が今から待ち遠しくてなりません。
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