2019年6月13日、梅雨入りもしっとりとした雨音が響くこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。家で過ごす時間が増える今こそ、じっくりと腰を据えて重厚な物語の世界に浸る絶好のチャンスです。今回は、文芸評論家の縄田一男氏が「目利きが選ぶ3冊」として激賞した、読み応え抜群の新作書籍をご紹介いたします。歴史のダイナミズムを感じさせる大作から、痛快な時代小説まで、本好きの心をくすぐるラインナップとなっています。
まず最初にご紹介するのは、東郷隆先生による久々の歴史大作『風魔と早雲』です。物語の舞台は、室町時代の「応仁の乱」から、戦国時代の幕開けとされる「堀越公方(ほりごえくぼう)」の茶々丸殺害までの激動期。この作品は、身分の低い者が実力で上の者を倒す「下克上(げこくじょう)」の時代のうねりを、圧倒的な筆致で描き出しています。歴史の教科書で見たあの出来事が、鮮やかなドラマとして蘇るのです。
本作の最大の読みどころは、後の北条早雲となる武将・伊勢新九郎と、彼に仕える忍者の一種である「乱波(らっぱ)」、風魔小太郎との主従関係でしょう。伊豆征服を進める早雲は、「龍脈」と呼ばれる大地のエネルギーの秘密を手に入れ、次第に人間離れした妖怪のような存在へと変貌していきます。対照的に、幻術を操る小太郎が人間的な「善」として描かれている点が非常にユニークです。この対比が物語に深みを与え、読者をぐいぐいと引き込んでいきます。
私自身、この作品を読んで感じたのは、徹底的な史実調査と大胆なフィクションの融合が織りなす極上のエンターテインメント性です。「史実の隙間をこう埋めるのか!」という驚きは、歴史小説ならではの醍醐味と言えるでしょう。SNS上でも「1800円という価格以上の価値がある」「分厚い本だが、徹夜で読んでしまった」「早雲の魔王のような描写に震えた」といった、熱量の高い反響が相次いでいます。
冤罪を晴らす痛快作と、名作捕物帳の研究書
続いてご紹介するのは、平谷美樹先生の新シリーズ第1弾『よこやり清左衛門仕置帳』です。こちらは、無実の罪、いわゆる「冤罪(えんざい)」に苦しむ人々を救うために奔走する「牢屋同心(ろうやどうしん)」が主人公。捜査に「横槍」を入れて真実を暴くことから名付けられたタイトルのセンスが光ります。火付けの罪を着せられた人を救うために駆け回る姿は圧巻で、読み終わった後にスカッとする爽快感がたまりません。
最後の一冊は、浅子逸男先生の『御用!「半七捕物帳」』です。時代小説ファンにはおなじみの名探偵・半七の活躍を掘り下げた、詳細かつ興味深い研究書となっています。特に、半七が聞き書きとして語ったとされる『開書帳』6編が収録されている点は見逃せません。ファンにとってはまさに「垂涎(すいぜん)」、喉から手が出るほど欲しい一冊と言えるでしょう。
今回ご紹介した3冊は、どれも梅雨の長雨を忘れさせてくれるような力作ばかりです。歴史の荒波に揉まれるもよし、人情味あふれる捕物劇に涙するもよし。ぜひ書店に足を運び、この週末のお供を選んでみてはいかがでしょうか。良質な物語との出会いは、きっと皆さんの日常を豊かに彩ってくれるはずです。
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