🚀株主還元で市場を沸騰させる! 減速する日本企業業績を支える「自社株買い」の最新動向と米国流の衝撃

世界経済を揺るがす米中貿易摩擦の「震度」は、市場で囁かれていた「成長なき株高」というシナリオを大きく揺るがしています。このシナリオは、企業業績が停滞しても、世界的な金融緩和が続くことで株価は上昇し続けるだろうという楽観的な見方に基づいたものでした。しかし、想定以上の貿易摩擦の激化により、投資家たちは新たな頼みの綱として自社株買いをはじめとする株主還元策に期待を寄せているのが現状です。企業の財務状況を見ると、長期間にわたる世界的な好景気の恩恵を受け、手元には莫大な現預金、いわゆる「キャッシュの山」が積み上がっていることが分かります。

直近10年間で日本の主要企業およそ400社は、事業活動を通じて実に471兆円もの現金を稼ぎ出しました。そのうち、設備投資やM&A(エムアンドエー:企業の合併・買収)に373兆円を費やし、残りの91兆円を配当や自社株買いといった株主還元にあてています。注目すべきは、この期間で7兆円もの現金を温存しており、総資産に占める現金の割合は12%にも達している点でしょう。これに対して、米国の主要企業は約1300兆円を稼ぎ出しながら、それを上回る資金を投資や株主還元に投じるという、日本とは対照的な「攻めの姿勢」を明確に打ち出しています。欧州の主要企業も稼いだ以上の金額を事業や還元に回す傾向が見られ、日本企業の保守的な財務戦略が浮き彫りになります。

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増える自社株買い:日本企業に変化の兆し

長年にわたり安全志向が根強かった日本企業ですが、その姿勢に変化の芽が見え始めています。金融業を除く全ての上場企業の手元資金は合計で122兆円に上りますが、この余剰資金を有効活用しようという動きが加速しているのです。その象徴的な事例として、ソニーの吉田憲一郎社長は2019年5月16日、2,000億円もの自社株買い枠の設定を発表した際に「健全性と投資機会とのバランスをとりつつ、機動的にやっていく」と述べています。ソニーは2019年2月に還元目的での自社株買いを初めて実施したばかりで、間髪入れずに「二の矢」を放った形です。三菱地所など、これまで自社株買いに消極的だった「大型新人」の実施も相次いでおり、東海東京調査センターの集計では、2019年4月から5月にかけての自社株買い枠の設定額は、この時期としては過去最高の3.5兆円を記録しました。こうした還元強化は、株高や配当を通じて個人の消費を刺激し、経済の活性化、ひいては企業の収益増大という好循環を生み出す兆しと言えるでしょう。

しかし、3月期決算を発表した企業のおよそ半数が、利益のうち配当に回す割合を示す配当性向を2〜3割程度に留めるなど、依然として業界内での横並び傾向が根強く残っていることも事実です。これに対し、投資家からのプレッシャーが非常に強い米国企業は、一歩も二歩も先を行く還元策を実施しています。例えば、米国のホームセンター最大手であるホーム・デポは、2019年1月期の決算で一時的に債務超過という状態に陥りました。これは、社債発行などで調達した資金を原資として、47億ドル(日本円で約5,000億円)の配当と約100億ドルの自社株買いを実施した結果、資本から差し引かれる金庫株(企業が自社で保有する株式)の金額が、資本金や剰余金などの株主資本を上回ってしまい、計算上の株主資本がマイナスに転じたためです。このような極めて強力な還元策が功を奏し、同社の株価は過去5年間で2.5倍にも上昇しています。

米国流還元の是非と求められる決断力

ホーム・デポのキャロル・トメ最高財務責任者(CFO)は、2019年5月下旬の株主総会で「我々には規律を保った資産配分方針がある。2019年も哲学は変わらない」と明言しました。この発言からも、米国企業が株主還元に極めて積極的であることが伺えます。私は、日本企業も過度な内部留保に甘んじるのではなく、こうした米国流の資本効率を重視した経営姿勢をもっと取り入れるべきだと考えます。積み上がった「キャッシュの山」は、企業が成長のための投資に使うか、株主に還元することで経済全体に循環させるべき「生き金」だからです。

ただし、自社株買いには弊害も存在します。株価と報酬が連動する企業の経営者が、運用成績を重視する投資家に過度に迎合し、企業の長期的な成長よりも短期的な株価上昇を追求する短期志向に走る懸念が拭えないのです。現在のように景気の勢いが衰えかけ、株式市場が自社株買いに依存しやすい状況においては、特にこのリスクが高まります。一方で、グーグルの親会社であるアルファベットやアマゾン・ドット・コムといった米国の巨大企業の中には、成長のための投資を最優先し、配当を出さない無配を続ける企業も少なくありません。還元に走るにせよ、成長投資に資金を投じるにせよ、最も重要なのは「死に金」を放置しない、経営の緊張感でしょう。米中貿易摩擦という逆風下にある今だからこそ、日本企業の経営者には、その決断力と柔軟性が強く試されていると言えるでしょう。

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