2019年09月07日、世界中が固唾をのんで見守る中、インドの無人月探査機「チャンドラヤーン2号」が月面着陸に挑戦しました。ヒンディー語で「月への乗り物」を意味するこの探査機は、2008年の初号機以来となるインドの野心的なプロジェクトです。しかし、着陸直前に通信が途絶えるという予期せぬ事態に見舞われ、機体は月面に墜落したとみられています。
このニュースはSNSでも大きな反響を呼び、「あと一歩だったのに悔しい」「インドの挑戦する姿勢に勇気をもらった」といった温かい応援メッセージが溢れました。着陸機「ビクラム」は、予定されていた軌道から大きく逸脱してしまいましたが、この果敢な挑戦こそが次なる一歩への糧となるはずです。失敗を恐れずに未知の領域へ踏み出すインドの姿勢は、正に宇宙先進国の風格を感じさせますね。
チャンドラヤーン2号の旅は、2019年07月22日の打ち上げから始まりました。約1ヶ月をかけて地球から約40万キロメートル離れた月の軌道に到達し、2019年08月20日には月を回る周回軌道へと入っています。今回の目的は、単なる着陸だけではありませんでした。月面に探査車を降ろし、月の岩石を直接調査するという、極めて高度なミッションを掲げていたのです。
なぜ「月の南極」なのか?世界が熱視線を送る水資源の秘密
これまで月面着陸に成功したのは旧ソ連、米国、中国の3カ国のみですが、その多くは着陸が比較的容易な赤道付近を選んでいました。今回インドが目指した「南極付近」は、起伏が激しく平坦な場所が少ないため、着陸の難易度が非常に高いエリアとして知られています。JAXAの星野健氏も、その難しさを指摘していますが、それでも各国がこの場所を目指すのには明確な理由があります。
それは、南極のクレーターの影に眠るとされる「水」の存在です。太陽の光が永久に届かない「永久影(えいきゅうえい)」と呼ばれる場所は極低温に保たれており、氷の状態で作物が保存されていると考えられています。水が存在すれば、月面基地での生活用水として利用できるだけでなく、電気分解によって「液体酸素」と「液体水素」を取り出すことが可能になります。
これらはロケットの強力な「推進剤(燃料)」となります。もし月で燃料を自給自足できれば、重力の強い地球から膨大なコストをかけて燃料を運び出す必要がなくなります。月が火星探査などの中継基地、いわば「宇宙のガソリンスタンド」としての役割を担うことになるでしょう。この水資源確保こそが、現代の宇宙開発における最大のビジネスチャンスといっても過言ではありません。
日本とインドの強力タッグ!2023年度の共同ミッションへ
インドの挑戦は、決して日本にとっても他人事ではありません。実は日本とインドは、2023年度を目標に月の極域(南極や北極)を共同で探査する計画を進めています。日本の次世代主力ロケット「H3」で打ち上げ、インドが着陸機を担当するという、お互いの強みを活かしたパートナーシップです。今回のチャンドラヤーン2号が収集した軌道上からの精密データは、この共同開発に直結する貴重な財産となります。
インドの宇宙開発能力は、2014年にアジア初の火星周回探査機「マンガルヤーン」を成功させるなど、目覚ましい進化を遂げています。2022年までには独自の有人宇宙船の打ち上げも計画されており、世界で4番目の有人宇宙開発国となるのは時間の問題でしょう。的川泰宣名誉教授が語るように、インドはもはや無視できない強力な宇宙先進国の一員なのです。
月には大気がないため、パラシュートで減速することができません。重力がある中でエンジン噴射のみを頼りに逆噴射で降りる「ソフトランディング」は、正に針の穴を通すような精密な制御技術が求められます。今回の結果を単なる「失敗」と捉えるのではなく、人類が月を生活圏にするための重要なプロセスだと私は考えます。日本とインドのタッグが、数年後に月の南極に日の丸とインド国旗を刻む日が今から楽しみでなりません。
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