働かなくても毎月一定の金額が支給される「ベーシックインカム」という言葉をご存知でしょうか。これは政府などがすべての人に無条件で現金を配る最低限の生活保障制度のことですが、これを民間企業がドキュメンタリー企画として実現しようとしています。東京・世田谷に拠点を置く「株式会社ベーシックインカム」は、1年間の密着取材と引き換えに、毎月20万円を支給するプロジェクトを始動させました。
この前代未聞の試みに、世間からは驚きと関心の声が上がっています。2019年9月16日には、東京・新宿にある早稲田大学にて、実際に資金を受け取る出演者を決める最終選考会が行われる予定です。SNS上では「もし自分だったら何をするか」「夢を追うチャンスになるのではないか」といった期待の声が寄せられる一方で、「お金をもらって堕落してしまわないか」といった懸念も飛び交い、大きな反響を呼んでいます。
約2,000人という膨大な応募者の中から選ばれたファイナリスト15名は、まさに十人十色の背景を持っています。なかなか収入に結びつかないけれど諦められない夢を追う者や、反対に何の目的も持たずただただ自堕落な時間を過ごしたいと願う者など、その顔ぶれは非常に多彩です。当日は彼らが順番に自己紹介を行い、早大生を含む3名の審査員が、誰に安定した収入を託すべきかを真剣に議論して1名を選び抜きます。
特筆すべきは、この選考プロセスそのものが一つのエンターテインメントであり、社会実験となっている点でしょう。会場には一般の観覧者を無料で受け入れるだけでなく、SNSを通じたライブ配信も実施されます。画面越しに視聴者から寄せられるリアルタイムのコメントが審査の議論にも反映される仕組みとなっており、まさに視聴者参加型で一人の人生を左右する瞬間を目撃することになるのです。
安定収入がもたらすのは希望か、それとも停滞か
今回のプロジェクトの肝となる支給金は、2019年10月にクラウドファンディング、つまりインターネットを通じて不特定多数の人から小口の資金を募る手法で調達される予定です。動画撮影に協力する以外は、何をして過ごしても自由というこのルール。働かざる者食うべからずという従来の価値観が根強い現代社会において、経済的な不安から解放された個人がどのような変容を遂げるのかを克明に記録していきます。
編集者の視点から言えば、この試みは単なるバラエティ番組の域を超え、未来の社会のあり方を問う重要な一石になると確信しています。AI技術の進歩などにより「働くこと」の意味が変わりつつある今、月20万円という、都内で自立して生活できる絶妙な金額が人に何をもたらすのか。もし選ばれた人が圧倒的な成長を遂げれば、ベーシックインカム導入の強力な後押しとなるかもしれませんし、その逆もまた然りです。
私は、この実験が「個人の可能性を解き放つもの」であってほしいと願っています。生活のために嫌な仕事に時間を費やすのではなく、自分が本当に価値を感じる活動に没頭できる環境。それが実現したとき、人間の創造性がどこまで発揮されるのか、今から楽しみでなりません。2019年9月16日の選考会は、まさに新しい時代の扉を開く、運命の1日となることでしょう。
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