2019年09月15日、アジアの経済地図を塗り替える歴史的な転換点が近づいています。日本や中国、インド、韓国など16カ国が参加する「RCEP(アールセップ)」の交渉が、いよいよ大詰めを迎えました。これは「地域包括的経済連携」と呼ばれる広域的な自由貿易協定で、もし実現すれば、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める世界最大級の経済圏が誕生することになります。
SNS上では「米中貿易摩擦が激化する中で、アジアが団結する意義は大きい」「関税が下がれば消費者にも恩恵があるはず」といった期待の声が上がる一方、「各国の利害一致は難しいのでは」という慎重な意見も散見されます。現在、世界経済は米中の貿易戦争による不透明感に包まれており、RCEPはこの閉塞感を打破する強力な「下支え」として、かつてないほどにその価値が高まっているのです。
しかし、2013年の交渉開始から6年が経過した今も、道のりは平坦ではありません。全20分野に及ぶ協議項目のうち、これまでに合意に至ったのは半数程度にとどまっています。特に「関税自由化」の水準、つまり輸出品にかかる税金をどこまで撤廃するかという点や、「電子商取引」におけるデータの取り扱いルールを巡って、参加国の間で激しい対立が続いています。
巨大貿易圏の誕生に向けた各国の思惑と交渉の最前線
2019年09月08日にタイのバンコクで開かれた閣僚会合では、関税に関して一定の進展が見られたものの、依然として多くの重要課題が積み残されたままとなっています。RCEPが単なる「形だけの合意」に終わらず、実質的な経済活性化をもたらすためには、自由化のレベルをどこまで高められるかが最大の焦点となるでしょう。目標とする年内妥結に向けて、各国のラストスパートが期待されます。
ここで注目すべきは、これまで慎重な姿勢を崩さなかった中国とインドの動向です。米中対立の激化に直面する中国は、新たな市場を求めて交渉に前向きな姿勢を見せ始めています。一方、インドでは2019年05月の総選挙で与党が勝利し、国内産業を保護しつつも政治的な決断を下しやすい環境が整いました。日本や豪州が求める高い自由化水準に対し、この両国をどう説得できるかが鍵となります。
交渉をさらに複雑にしているのが、日韓関係の冷え込みという外的な要因です。2019年08月03日の北京での閣僚会合では、歴史問題に端を発する輸出管理の厳格化を巡って韓国が日本を批判する場面がありました。バンコクでの会合では自制が見られましたが、こうした二国間の対立が、地域全体の経済的利益を損なうような事態は避けなければなりません。大局的な視点こそが今、何より必要です。
日本はこれまでに米国抜きのTPP11や日欧EPAといった、難度の高い巨大な経済協定を主導して成立させてきた実績を持っています。この豊富な経験と知見を活かし、対立する国々の「橋渡し役」としてリーダーシップを発揮すべきではないでしょうか。私個人としても、保護主義の波が世界を覆う今こそ、自由で開かれたルールに基づいたRCEPの実現は、アジアの未来を照らす希望になると確信しています。
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