世界中の市場関係者が固唾をのんで見守るなか、大きな動きがありました。2019年9月17日夜、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が記者会見を開き、何者かによる攻撃で甚大な被害を受けた石油施設の生産能力について、早期に回復する見通しを明らかにしたのです。
この力強い発表を受け、当面の原油不足に対する市場の不安は急速に和らぎました。実際に、同日のニューヨーク市場では急騰していた原油価格が大幅な下落に転じています。私たちの生活に直結するエネルギー問題なだけに、ひとまずは安堵の胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。
驚異的な復旧スピードとアラムコの底力
国営石油会社サウジアラムコは当初、この攻撃によって全体の生産量の約6割にあたる日量570万バレルもの原油が生産停止に追い込まれたと発表していました。ちなみに「バレル」とは原油の取引で使われる単位で、1バレルはおよそ159リットル(ドラム缶約1本弱)に相当します。とてつもない量の供給がストップしたことがわかりますね。
しかし、アブドルアジズ氏は2019年9月末には日量1100万バレルの生産能力を取り戻し、攻撃前の供給体制へ素早く復帰できると断言しました。さらに2019年11月末までには1200万バレルまで回復させるとも語気を強めています。
一時的な生産のストップが輸出に深刻な影響を与えなかった点も注目に値します。既存の備蓄(万が一に備えて原油を蓄えておくこと)を活用したり、被害を免れた他の油田から調達したりすることで、2019年9月も契約通りに顧客へ石油を届けられると強調しています。サウジアラムコの危機管理能力の高さが見て取れるでしょう。
また、同社のルマイヤン会長は、今回の事件で延期も囁かれていた新規株式公開(IPO)についても「12カ月以内に実現させる」と明言しました。IPOとは、未上場の企業が自社の株を初めて市場に公開し、一般の投資家が売買できるようにすることです。同社の強い意志と自信の表れだと言えます。
SNSでの反響と緊迫する中東情勢の行方
今回のサウジアラビア側の発表に対し、SNS上では様々な反応が見受けられます。Twitterなどの投稿を覗いてみると、「ガソリン代が一気に跳ね上がるかと思ってヒヤヒヤした」「市場が落ち着きを取り戻してくれてよかった」といった安堵の声が広がっているようです。
しかしながら、決して手放しで喜べる状況ではありません。アブドルアジズ氏は攻撃の実行犯について「誰が実行したかは分からない」と明言を避けています。その一方で、アメリカは背後にイランが関与しているとの疑念を深めており、事態は非常に複雑です。
アメリカ政府はポンペオ国務長官を2019年9月17日からサウジアラビアなどへ派遣し、今後の対応策について協議を開始すると決定しました。アメリカとイランの激しい対立を軸とした中東情勢の緊迫状態は続いており、いつまた原油供給を脅かす火種が燃え上がってもおかしくない状況が続いています。
私たちが考えるべきエネルギーの未来
一連の騒動を通じて、私は改めて日本のエネルギー安全保障の脆さを痛感しました。原油の大部分を中東地域に依存している日本にとって、遠い異国の地で起きている紛争は決して対岸の火事ではありません。
中東の情勢次第で、私たちが毎日使う電気代やガソリン代が大きく変動するリスクを常に抱えているのです。今回のサウジアラビアの迅速な対応には救われましたが、運が良かっただけと捉えるべきでしょう。
私たちは今こそ、再生可能エネルギーの導入をさらに加速させたり、資源の調達先を世界各地へ分散させたりするなど、特定の国や地域に依存しすぎないエネルギー戦略を真剣に考える時期に来ていると強く感じます。未来の世代へ安定した社会を引き継ぐために、国も企業も国民も一丸となってこの課題に向き合っていくべきではないでしょうか。
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