⛰️【丹沢の守り神】山岳救助指導官・相田一己警部補の尽きせぬ使命感:登山者の安全を守るプロの技術と警鐘

神奈川県の「屋根」として親しまれ、四季を通じて多くの登山客が訪れる丹沢山地。その麓にある神奈川県警松田署三保駐在所で、22年間にわたり登山者の安全を見守り続けているのが、警部補の相田一己さん(53歳)です。相田さんは、県警内でただ一人の**「山岳救助技能指導官」**という重責を担い、現場での救助活動はもちろん、後進の育成にも尽力されています。まさに、丹沢に登る人々にとっての「守り神」のような存在と言えるでしょう。

相田さんが警察官の道を歩み始めたのは、高校を卒業されてから。当初は明確な動機があったわけではないそうですが、機動隊員や刑事といった職務で充実した日々を送られていました。転機が訪れたのは、ある日「山岳救助のリーダーになってほしい」という打診を受けた時です。もともと渓流釣りを楽しまれ、各地の山を歩くのが好きだったこと、そして高校時代には北アルプスの槍ヶ岳への登頂経験もあったことから、その道に踏み出します。そして31歳の時、現在の三保駐在所への赴任を希望されました。

赴任当時の神奈川県警は、山岳救助に関する高度な技術やノウハウが十分ではありませんでした。そこで相田さんは、山岳救助の“先進県”である富山で研修を受けられたり、登山用品店で最新の機材を独自に研究されたりといった、並々ならぬ努力を重ねられました。松田署が管轄する西丹沢エリアは、その面積が約115平方キロメートルと、横須賀市全域よりやや広い広大な山域です。相田さんは、捜索活動の合間や空いた時間を使って山を歩き、登山道や沢一つひとつの情報を、まるで地図のように頭の中に焼き付けていかれたと言います。

これまでに相田さんが救助された登山者の数は、1,000人以上にものぼります。その一方で、助けられなかった命があるのも事実です。駐在所での22年間で搬送されたご遺体は94体。特に、1999年に発生し、キャンプ中の家族など13名が犠牲となった玄倉川(くろくらがわ)水難事故の際は、犠牲者が目の前を流されていくのを目の当たりにされたそうです。こうした過酷な経験を経てもなお、「なるようにしかならない。自分がやれることをやるしかない」と達観したような言葉を口にされるのは、常に**「やれることの最大限」**を尽くしてきたという強い自負があるからこそではないでしょうか。このプロフェッショナルとしての覚悟と使命感には、頭が下がるばかりです。

「山岳救助技能指導官」として、相田さんは近隣警察署や機動隊の警察官を指導される際、安全管理の徹底を厳しく指導されています。「若手の警察官たちが教えたことを実践し、事故なく救助活動を遂行しているのを見ると、本当に良かったと感じます」と語る言葉には、後進の成長と安全を願う、熱い想いが込められていることがわかります。山岳救助の現場では、二次遭難、つまり救助者が事故に遭ってしまう危険も常に存在します。相田さんの指導は、遭難者を救う技術だけでなく、救助隊員自身の命を守るための知恵と経験が詰まった、貴重なノウハウの伝承だと言えるでしょう。

しかしながら、中高年層を中心に山岳遭難は後を絶ちません。記事が制作された2019年も、松田署管内だけで既に16件の遭難事故が発生し、1名が亡くなられています。これから本格的な夏山シーズンを迎え、入山者が増えることが予想されます。相田さんは、登山者に向けて「無理なコースを歩かないこと」「単独での登山は控えてほしい」と、力強く呼びかけていらっしゃいます。ご自身が大好きな丹沢から事故をなくしたいという願いを込めた、この切実な警鐘に、私たち読者も真摯に耳を傾ける必要があるでしょう。山に入る際は、綿密な計画と準備、そして何よりも「無理をしない勇気」を持つことが、自分の命と救助に携わる方々の安全を守ることに繋がります。

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