2019年09月14日に発生したサウジアラビアの石油施設への攻撃は、世界のエネルギー市場に大きな衝撃を与えました。この事態を受けて原油価格が激しく上下する中、日本国内のエネルギー供給を支えるJXTGホールディングスの動向に熱い視線が注がれています。現在、日本には約230日分もの石油備蓄が確保されており、専門家からは供給不足を過度に恐れる必要はないとの冷静な分析も聞こえてきます。
SNS上では「ガソリン代が明日から上がるのではないか」といった消費者の不安の声が目立つ一方で、投資家の間では「有事の際のエネルギー株の底力」に期待する書き込みも散見されます。しかし、同社の収益構造を紐解くと、実は原油価格の変動という外部要因に翻弄されてきた歴史が見えてきます。原油が届いてから製品として売れるまでのタイムラグが、利益率の激しい上下動を招く要因の一つとなっているのです。
2018年04月から06月期の好決算と比較して、2019年04月から06月期の純利益が大幅に減少したのも、まさにこの原油価格の波によるものです。将来の市況を見通すのが困難であるため、株価の割安さを示すPER(株価収益率)は現在5倍という低い水準にとどまっています。PERとは、企業の純利益に対して株価が何倍まで買われているかを示す指標ですが、この低さは投資家がリスクを慎重に見極めている証拠と言えるでしょう。
しかし今、長期的な視点を持つ投資家たちは、JXTGが手元に積み上げた「想定外の2500億円」という莫大なキャッシュに期待を寄せています。2017年04月の統合時に描いた3年間のフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)の計画は5000億円でしたが、実際には2年間で約7500億円に達しました。統合による相乗効果が予想以上に発揮されたこと、そして近年の原油価格の上昇トレンドが、この驚異的な数字を叩き出したのです。
脱・石油依存への大転換!プラットフォーマーを目指すENEOSの挑戦
この潤沢な資金を背景に、同社は2019年05月、2040年を見据えた壮大な長期ビジョンを発表しました。杉森務社長は、全国に1万3000カ所ある給油所のネットワークを活かし、石油だけでなく電力や水素なども提供する地域の「プラットフォーマー」を目指すと宣言しています。石油に頼るだけのビジネスモデルから脱却し、私たちの生活に密着したあらゆるサービスを網羅しようとする意欲的な姿勢が伺えますね。
その一環として注力しているのが「ENEOSでんき」の展開です。2016年にスタートしたこの電力小売事業は、2019年09月からは中部電力の管内でもサービスを開始し、2020年06月までには沖縄を除く日本全国をカバーする体制が整う見込みです。車を持たない世帯とも接点を持つことで、顧客基盤を盤石にする狙いがあります。エネルギーの地産地消や多様化が進む現代において、この多角化戦略は非常に理にかなっています。
世界に目を向ければ、欧州の石油メジャーも再生可能エネルギーに巨額の投資を行い、脱・石油の動きを加速させています。個人的な意見を言わせてもらえば、JXTGが手にしたこの「2500億円」を、単なる穴埋めではなく、どれだけ革新的な次世代ビジネスに振り向けられるかが、日本のエネルギー自給と企業の未来を分ける分岐点になるはずです。古き良き「ガソリンスタンド」が、未来のインフラへと進化する瞬間に立ち会っているのかもしれません。
コメント