2019年09月26日、東北のものづくり現場から熱い挑戦の物語が届きました。宮城県に拠点を置く登米精巧の後藤康治社長は、2014年から自動車部品供給という極めて高い壁に挑み続けています。かつて東北の産業を支えた家電や情報通信分野の生産拠点が次々と海外へ移転するなか、国内で確固たる基盤を持つ自動車産業への参入は、まさに会社の存続を懸けた背水の陣だったといえるでしょう。
後藤社長は、バブル崩壊や急激な円高といった荒波を乗り越えてきた経営者です。そんな彼が毎年コンスタントに新卒採用を続け、若い力を守り抜くために下した決断が、トヨタ自動車に代表される厳しいモビリティの世界への挑戦でした。変化を恐れて現状維持を選ぶことは、変化の激しい現代においては衰退と同義です。同社の歩みは、地方の中小企業が生き残るためのひとつの道標を示しているのではないでしょうか。
「自己評価30点」からの再出発が磨き上げた究極の品質管理
しかし、その門出は決して平坦なものではありませんでした。自動車は人の命を預かり、過酷な環境下で長期間使用されるため、他の製品とは比較にならないほどの高い品質管理が求められます。登米精巧は、全社員の7割が国家資格を持つ「ものづくりのプロ集団」であり、当初はトヨタが求める水準に対しても70点程度は取れると自負していました。ところが、実際に足を踏み入れて突きつけられた現実は、わずか30点という厳しい自己評価だったのです。
この衝撃的なギャップを埋めるため、同社は社内改革だけに留まらず、仕入れ先を含めた「部会」を組織しました。品質、生産性、安全性を共に学ぶ勉強会を重ね、サプライチェーン全体の底上げを図るという徹底ぶりです。こうした泥臭い努力を積み重ねた結果、現在ではようやく70点から80点にまで到達したといいます。慢心することなく、常に軌道修正を繰り返す粘り強さこそが、製造業における真の競争力を生む源泉なのでしょう。
SNS上でも「これほどのプロ集団が30点からスタートするとは、自動車産業の裾野の広さと厳しさが伝わる」「中小企業がトヨタの基準に食らいつく姿勢は、日本の製造業の底力そのものだ」といった称賛の声が上がっています。単なる利益追求ではなく、会社全体の競争力を高める「無形の資産」としてこの苦労を捉える後藤社長の哲学は、多くの経営者に勇気を与えるはずです。
参入を迷う企業に対し、後藤社長は「長期戦を覚悟し、一歩踏み出すことが重要だ」と説きます。小型車の需要がさらに拡大すれば、地方のメーカーにもより多くのチャンスが巡ってくるでしょう。私自身も、こうした一社一社の「しつこいほどの情熱」こそが、次世代のモビリティ社会を支える不可欠なエンジンになると確信しています。困難な道を選び、自らを鍛え上げる登米精巧の挑戦から、今後も目が離せません。
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