2014年9月27日に発生し、多くの犠牲者を出した御嶽山の噴火から、2019年9月27日でちょうど5年の節目を迎えました。あの日、突如として牙を剥いた自然の脅威は、私たちの防災意識を根底から覆したと言っても過言ではありません。気象庁は現在、火山活動の微細な変化をいち早く察知するため、これまでにない規模で観測体制の強化を急いでいます。SNS上では「あれからもう5年か」「登山の際は必ずヘルメットを携帯するようになった」といった、当時の記憶を風化させまいとする声が数多く寄せられています。
具体的な対策として、気象庁は全国43箇所の活火山において、高精度の地震計を増設しました。これにより、マグマや火山ガスの移動に伴って発生する「低周波地震」の検知能力が飛躍的に向上しています。低周波地震とは、一般的な地震よりも振動の周期が長い揺れのことで、噴火の前兆現象として極めて重要な指標となります。さらに、地面のわずかな傾きを数万分の1度の精度で測定する「傾斜計」を29火山に、地表の温度変化を可視化する「熱映像カメラ」を28火山に設置し、多角的な監視の網を広げているのです。
しかし、最新鋭の機材を揃えてもなお、自然は時に私たちの想像を軽々と超えてきます。2018年1月23日に発生した草津白根山の本白根山における噴火や、2019年8月7日の浅間山の噴火では、明確な前兆現象が事前に観測されませんでした。こうした事態を受け、気象庁は「突発的な噴火は常に起こりうる」と強い警鐘を鳴らしています。たとえ噴火警戒レベルが「1」という静穏な状態であっても、そこが活火山である以上、リスクがゼロになることは決してないという厳格な姿勢が示されています。
「予測の限界」を認めることから始まる新しい登山スタイル
編集者の視点から申し上げれば、私たちは「行政が予報を出してくれるから安全だ」という依存心から脱却すべき時期に来ていると感じます。現在の科学技術をもってしても、地下深くの複雑な動きを完璧に読み解くことは困難です。防災インフラの充実は心強いものですが、それを過信せず、自らの命を守るための装備や知識を整える「セルフレスキュー」の精神が、令和の登山者には求められています。山は美しく豊かな場所であると同時に、人知の及ばない荒ぶる神の一面も持っていることを忘れてはなりません。
監視網の拡大によってデータは蓄積され、分析の精度は確実に上がっています。しかし、最終的に運命を分けるのは、現場での迅速な判断と事前の備えに他なりません。登山届の提出やヘルメットの装着、そして避難小屋の場所を確認するといった基本動作の積み重ねこそが、最悪の事態を回避する唯一の鍵となります。御嶽山の教訓を胸に刻み、自然への畏敬の念を持ち続けながら、私たちは火山大国である日本でいかに安全に遊び、生きていくかを問い直していく必要があるでしょう。
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