2019年10月01日の消費税率引き上げをきっかけに、街中のお店で決済端末の「主役交代」が静かに、しかし確実に進んでいます。特に注目すべきは、これまで旧来型のレジを使っていた中小店舗の動きです。NECプラットフォームズでは、POSレジシステムの引き合いが前年比で約1.8倍にまで膨れ上がっており、増税対応を商機と捉えた熱狂的な需要が渦巻いているようです。
SNS上でも「増税を機にレジが新しくなって、支払いがスムーズになった」「タブレットレジがおしゃれで使いやすい」といったポジティブな反応が目立ちます。そもそもPOSレジとは「Point of Sale」の略で、商品の販売時点の情報をリアルタイムで管理するシステムを指します。単なる計算機ではなく、いつ何が売れたかを分析できる経営の司令塔とも言える存在なのです。
スマホ感覚で導入できる「モバイルPOS」が個人店を救う
今回の増税対応において、特に目覚ましい躍進を遂げているのが、iPadなどのタブレット端末を活用した「モバイルPOSレジ」です。2010年からこの分野を切り拓いてきた「ユビレジ」は、2019年05月までに登録数が約3万件に達しました。操作の簡便さが飲食店の心を掴んでおり、複雑な設定を嫌う現場の強い味方として、その地位を不動のものにしています。
また、リクルートライフスタイルが展開する「Airレジ(エアレジ)」の勢いも止まりません。2019年06月時点での累計アカウント数は約42万件にのぼり、前年と比較して2割もの成長を見せています。家電量販店のビックカメラでも、専用コーナーでの売り上げが前年同期比で3倍に跳ね上がるなど、導入のハードルが下がったことで個人経営店による「レジ革命」が起きていると言えるでしょう。
現場で対応にあたる販売員の方々によれば、2019年08月以降に問い合わせが急増したとのことです。モバイルPOSの魅力は、何といってもコストの低さと将来性です。もし今後さらに税率が変わるようなことがあっても、アプリをアップデートするだけで対応できる柔軟性は、経営者にとって大きな安心材料となります。ITに詳しくない層でも直感的に扱えるUX(ユーザー体験)の進化は、特筆すべき点です。
大手企業を支える盤石なサポート体制と今後の市場展望
一方で、大手チェーン店などが導入している高機能な据え置き型POSレジについては、中小店舗のような爆発的な買い替え需要、いわゆる「特需」は見られませんでした。これは、既存の機種であってもソフトウェアの書き換えや設定変更だけで複数税率に対応できるケースが多いためです。しかし、機器の更新がないからといってメーカーが静観しているわけではありません。
業界最大手の東芝テックは、ウェブサイトを通じて丁寧な設定ガイドを提供し、富士通はシステムエンジニアを直接現場へ派遣して、入念な動作テストを繰り返してきました。消費税増税という社会的な大きな節目において、いかに顧客のビジネスを止めないかという「守りの支援」に注力している姿が印象的です。既存のシステムを大切に使い続ける大手と、軽快な最新ツールへ飛びつく中小という対比が鮮明になっています。
編集者の視点から言えば、今回の増税は単なるコスト増ではなく、日本の小売・飲食業界における「デジタル化の強制的なアップデート」だったと感じます。インバウンド需要に伴うキャッシュレス決済への対応も不可欠な今、レジの更新は生き残りのための先行投資です。この勢いが一時的な流行で終わるのか、それともPOSレジ市場の勢力図を根底から塗り替える地殻変動となるのか、今後も目が離せません。
コメント