飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げてきたシェアオフィス大手「ウィーワーク(WeWork)」を運営するウィーカンパニーが、今まさに大きな岐路に立たされています。これまで世界的な低金利を背景に、膨大な資金を投じて拡大路線を突き進んできた同社ですが、足元では経営不安の影が色濃く漂い始めました。この事態は単なる一企業の不振にとどまらず、加熱しすぎたアメリカのオフィス市場全体を冷え込ませる転換点となる可能性を秘めています。
2019年10月09日現在の状況を整理すると、ウィーワークはソフトバンクグループなどから100億ドルを超える巨額出資を受け、圧倒的なスピードで拠点を広げてきました。しかし、期待されていた新規株式公開(IPO)が延期されたことで資金調達の道が険しくなり、現在は2000人規模の人員削減を含む抜本的な収益改善を迫られています。SNS上でも「ユニコーン企業の象徴だったのに」と、そのビジネスモデルの持続性を危惧する声が相次いでいます。
シェアエコノミーの寵児が作り出した「実需なきバブル」
不動産サービス大手CBREの調査によれば、2019年06月末時点でのシェアオフィス面積は、シアトルで前年比7割増、サンフランシスコで5割増と驚異的な数字を記録しました。特筆すべきは、全米のシェアオフィス増加分のうち約6割をウィーワークが占めている点です。彼らは競合のリージャスを抜き去り、主要都市でトップシェアを誇りますが、専門家からは「実際の需要を超えた市場を無理やり作り出していた」との厳しい指摘も出ています。
ここで注目したいのは「逆ザヤ」のリスクです。ウィーワークはビルオーナーと約15年という長期の賃貸借契約を結ぶ一方で、利用者には月単位という短期でスペースを貸し出しています。好景気時は問題ありませんが、景気が後退すれば利用者はすぐに解約できるため、ウィーワーク側の収入だけが急減し、巨額の賃料支払いだけが残るという脆弱な構造を抱えているのです。これが「金融安定性への新たなリスク」として当局からも警戒されています。
「所有から共有へ」の価値観とギグワーカーの行方
市場が揺らぐ一方で、現場の利用者からは根強い支持があるのも事実です。特に特定の企業に属さず単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」や起業家にとって、世界中の拠点を自由に使える利便性は代えがたいものです。ある起業家は「ビジネスに欠かせないインフラ」と語っており、シェアという価値観自体はもはや一過性の流行ではありません。しかし、運営元が「他より高い賃料を払ってでも物件を押さえる」という強気の姿勢を崩せば、話は変わります。
マンハッタンの不動産関係者は、ウィーワークの強引な拡大が地域の賃料相場を不自然に押し上げていたと分析しています。もし彼らが拡大を止めれば、これまで右肩上がりだったオフィス賃料は、ようやく適正な価格を模索するフェーズに入るでしょう。私個人の見解としては、今回の騒動は「共有」という素晴らしいコンセプトが、過剰な投資マネーによって歪められた結果だと感じます。今後は、地に足のついた持続可能な運営が求められるはずです。
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