2019年10月11日に日本での公開を迎え、映画ファンの間で凄まじい熱狂を巻き起こしている作品が、アリ・アッバシ監督の最新作『ボーダー 二つの世界』です。本作の主人公・ティーナは、他人の「罪悪感」や「恐怖」を匂いとして嗅ぎ分けるという、常人離れした特殊な嗅覚を持つ税関職員。そんな彼女が、自分と同じような風貌と不思議な能力を持つ男ヴォーレに出会うことで、自身の平穏な日常が音を立てて崩れ去っていくことになります。
SNS上では、そのあまりに独創的な設定と描写に、「今までに見たことがない衝撃」「美しさとグロテスクさが同居している」といった反響が2019年10月の公開直後から相次ぎました。単なるサスペンス映画の枠を超え、見る者の価値観を揺さぶるこの作品は、まさに主人公の存在そのものが最大のミステリーといえるでしょう。北欧ミステリー特有の冷涼な空気感と、予測不可能な展開が観客を釘付けにするのです。
北欧神話と現実が交錯する!ティーナの出生に隠された驚愕の真実
物語の鍵を握るのは、ティーナの体に残された謎の傷跡と、彼女が感じる「自分は他人とは違う」という深い疎外感にあります。ここで重要になるのが、作品の底流に流れる「北欧神話」の要素です。古くからスカンジナビア諸国に伝わる神話や伝承は、自然への畏怖や異形のものへの畏まりを内包しており、本作はそれらを現代の社会問題と巧みに結びつけています。ティーナが自らのルーツを知る過程は、非常に重厚なドラマとして描かれました。
作中で描かれる「トロール」という存在は、北欧神話における妖精や巨人の一種を指しますが、本作ではこれを単なるおとぎ話としてではなく、遺伝的・生物学的なリアリティを持って描写しています。私が思うに、本作の素晴らしさは「異端」とされる存在の悲しみと誇りを、ファンタジーのフィルターを通して鋭く突きつけてくる点です。2019年10月18日現在、この深いテーマ性が多くの批評家からも高い評価を得ているのは当然だと言えるでしょう。
ティーナの出生の秘密が明かされる瞬間、ミステリーのピースが次々と繋がり、観客は言葉を失うような感動と衝撃に包まれるはずです。誰しもが抱く「自分は何者なのか」という根源的な問いに対し、アリ・アッバシ監督は極めて独創的な回答を用意してくれました。現実世界の境界線(ボーダー)を越えた先に待っている、魂の解放とも呼べる物語の結末を、ぜひスクリーンでその目で見届けていただきたい一作です。
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