私たちの生活に欠かせない「食」をテーマに、心温まる物語を公募する「日本おいしい小説大賞」。小学館が2018年に創設したこの新しい文学賞の記念すべき第1回授賞式が、2019年09月に東京都内で華やかに開催されました。約160編という多数の応募作の中から、栄えある初代受賞作に選出されたのは、古矢永塔子氏の筆による「七度洗えば、こいの味」です。
この賞は、単なる料理の描写にとどまらず、食を通じて描かれる人間模様や感情の機微を重視しています。SNS上では「美味しそうなタイトルに惹かれる」「食欲と読書欲を同時に満たしてくれそう」といった期待の声が早くも上がっており、新しいグルメ小説の金字塔になる予感を感じさせます。文学界に新しい風を吹き込むこの試みは、多くの読者の注目を集めているようです。
等身大の視点が紡ぐ、自分にしか書けない物語
授賞式の壇上に立った古矢永氏は、自身の執筆動機について感慨深く語りました。結婚してから約10年、家族と共に食卓を囲む日常を積み重ねてきた同氏。プロの料理人でも食通でもない自分だからこそ、家庭の中で育まれる「食」のリアルな温度感を物語に投影できると考えたのでしょう。特別な背伸びをしない、地に足のついた視点が多くの共感を呼ぶ鍵となりそうです。
受賞作の「七度洗えば、こいの味」は、対人関係に葛藤を抱える28歳の女性が主人公です。彼女が食と料理という営みを通じて、72歳の男性と心を通わせていくプロセスが繊細に描写されています。年齢という数字を超えた魂の交流は、現代社会において希薄になりがちな「丁寧な人間関係」の大切さを、私たちに改めて問いかけてくれるのではないでしょうか。
選考過程では、40歳以上も年齢が離れた男女の恋模様に対し、「リアリティに欠けるのではないか」という厳しい意見も飛び出しました。しかし、最終的には選考委員の心を動かし、なんと満票での受賞という圧倒的な評価を獲得したのです。単なる恋愛の枠組みを超えた、筆者の筆力と物語の持つ純粋な熱量が、プロの目利きたちを納得させたといえるでしょう。
2020年02月の刊行が待ち遠しい!食欲と心を揺さぶる一冊
食をテーマにした「グルメ小説」は、五感を刺激する特別なジャンルです。専門用語としてよく使われる「シズル感」とは、瑞々しさや食欲をそそる感覚を指しますが、本作はまさに言葉の端々から美味しそうな香りが漂ってくるような魅力に満ちています。文章を読むだけでお腹が空き、同時に心が満たされるような読書体験は、忙しい現代人にとって至福の癒やしとなるはずです。
編集者の視点から見ても、本作のような「日常の延長線上にある物語」は、読者の生活に深く根ざす強さを持っています。壮大なファンタジーも素敵ですが、今日の献立や隣にいる大切な人を思い浮かべたくなるような作品こそ、長く愛される名作になる可能性を秘めています。選考委員を唸らせたその描写力を、早く私たちも直接ページをめくって体感したいものです。
待望の単行本は、2020年02月に発売される予定となっています。冬の寒さが残る季節、温かい料理が登場するこの物語は、私たちの冷えた体と心を優しく温めてくれるに違いありません。新進気鋭の作家・古矢永塔子氏が描く、食と恋のアンサンブル。書店に並ぶ日が今から待ちきれません。
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